写真●NECの新野隆社長兼CEO(最高経営責任者)
写真●NECの新野隆社長兼CEO(最高経営責任者)
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 NECは2016年4月28日、2016年3月期の連結決算を発表した。売上高は前年同期比3.9%減の2兆8212億円、営業利益は同16.2%減の1073億円で、減収減益となった。官公庁・公共や通信業界向け事業が落ち込んだほか、エネルギー事業で苦戦した。不採算案件が約170億円に上ったことも響いた。2016年3月期を最終年度とする中期経営計画で売上高3兆2000億円、営業利益1500億円を掲げていたが、未達に終わった。

 官公庁や公共向けの「パブリック」、通信事業者向けの「テレコムキャリア」が減収減益と不調だったことに加え、売上減や採算悪化が顕著だったエネルギー事業を含む「その他」セグメントが、赤字に転落するなど足を引っ張った。

 「パブリック」の売上高は前年同期比6.7%減の7668億円、営業利益が同172億円減の575億円。「テレコムキャリア」の売上高は前年同期比5.6%減の6989億円、営業利益が同164億円減の456億円だった。「その他」は、売上高が前年同期比12.8%減の3262億円、営業損益が同129億円悪化し、89億円の赤字となった。

 唯一、好調だったのが、製造業や流通業向けの「エンタープライズ」セグメントだ。大型案件の獲得が寄与し、売上高が前年同期比11.2%増の3007億円、営業利益が139億円増の222億円だった。

 会見に臨んだ新野隆社長兼CEO(最高経営責任者)は、「社会ソリューション事業に注力するという目標は間違っていなかったが、実行力が足りなかった」と、未達に終わった前中期経営計画を振り返った(写真)。

 NECは、2019年3月期を最終年度とする新中期経営計画も発表した。注力事業を三つに絞ると同時に、成長のエンジンを海外に求める姿勢を鮮明にしている。

 新中期経営計画では売上高3兆円、営業利益1500億円(IFRSベース。NECは2017年3月期よりIFRSを任意適用する)、営業利益率5%を目標に掲げた。国内事業を横ばいとする一方、海外事業は年平均成長率10%を目指す。成長を加速するためにM&A(合併・買収)資金として2000億円を準備すると共に、2016年2月にチーフ・グローバル・オフィサー(CGO)に指名した森田隆之執行役員常務を海外事業の責任者と明確に位置づける。

 注力3領域としたのは、海外向けに強みを発揮できると見込む「セーフティ」、「グローバルキャリア向けネットワーク」、「リテール向けITサービス」だ。これら3事業の海外売上高を現在の倍以上に当たる約3000億円とすることを狙う。

 NECは海外売上高比率を早期に25%とすることを掲げていたが、新中期経営計画では具体的な数字目標は示さなかった。ただし海外売上高を8000億円と計画しており、達成すれば海外売上高比率は27%となる。

 新野社長は、「この3年間、海外で事業の柱を作るのに時間がかかることを痛感した。M&Aを活用しながら、注力する3領域に全力を投じたい」と、意気込みを語った。M&A戦略の詳細については言及を避けたが、技術的な補完関係にある海外企業などを対象とする方向性を示した。