V-Lowマルチメディア放送やFM放送、280MHz帯電気通信業務用ページャーの三つが、防災行政無線の代替手段として、緊急防災・減災事業債の対象に追加されることになった。消防庁は、対象の追加などについて記載した通知「災害時の住民への情報伝達体制の更なる強化について」(消防情第96号、こちら(PDFファイル))を2016年4月1日に発出、都道府県経由で全国の地方自治体に情報を周知した。

 緊急防災・減災事業債は、東日本大震災を教訓に、全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災のための地方単独事業を対象にする地方債である。財政措置の内容は、地方債充当率が100%、交付税算入率が70%である。

 これまで、防災行政無線(同報系)がこの緊急防災・減災事業債の対象になっていた。さらに、財政的理由などから防災行政無線の早期整備が困難な場合にMCA陸上移動通信システムあるいは市町村デジタル移動通信システムに屋外拡声機能を設けることで、防災行政無線の代替としての利用を可能にしていた。

 今回の通知は、一定の要件を満たし、防災行政無線と同等の機能を有する場合にV-Lowマルチメディア放送など三つの手段も代替として利用できるようにするもの。地方自治体の選択肢を増やすことで、情報伝達手段の一層の早期整備を促す狙いだ。要件は大きく二つある。(1)防災行政無線または戸別受信機が整備されていない地域において、整備経費および運用経費の合計が防災行政無線より安価であること、(2)十分な耐災害性を有するように地震対策や停電対策、浸水対策について所要の措置を講じること─の2項目である。

 緊急防災・減災事業債の対象範囲は、V-Lowマルチメディア放送やFM放送を例にとると、情報伝達設備(市町村庁舎などに設置され防災情報を入力、送信するためのもの)は対象になる。送信局(親局)は対象外。中継局は、放送事業者が計画的に整備する送信局でカバーできないエリアで市町村が整備して放送事業者に長期貸与するものを対象設備とし、1/2の経費を対象範囲にした。屋内受信機については、防災情報を受信すると電源オフの場合でも自動起動するよう機能を付加しているものを対象設備とし、防災機能を付加するための割り増し経費を対象範囲とした。防災情報を受信し音声放送を行う屋外拡声装置は対象である。

 通知では、これらの情報伝達手段は比較的新しい仕組みであることから、当面はこれらの手段を整備する場合に事前に消防庁に相談することを要望している。また、全国瞬時警報システム(Jアラート)との接続性確保への配慮も求めた。

 なお、例えばV-Lowマルチメディア放送を推進する陣営は、同放送波と自動起動機能付き防災ラジオを組み合わせた「V-ALERT」(関連記事)の仕組みを用意し、この仕組みの採用を地方自治体に働きかけている。