新日鉄住金は2016年3月31日、経営統合に伴うシステム統合に関する説明会を開催した。「統合作業は2016年度が“山場”、一般管理系および営業系の基幹システムを中心に、2016年度中に主要システムの統合を終える」。新日鉄住金 業務プロセス改革推進部長の米澤公敏氏は、こう進捗を話した。4月1日には「高度IT活用推進室」を社内に設置し、ビッグデータやIoT(Internet of Things)、AIなど高度ITのグループ内活用を進める体制も整える。

 新日本製鉄と住友金属工業が経営統合したのは2012年10月。以来、人事や会計、知的財産管理や原料など、早急に統合が必要なシステムについては2014年度から作業を進めてきた。統合の基本方針は「旧新日鉄システムへの片寄せ」だが、「勤務管理やパイプの取り扱いなど、旧住金が優れている場合はそれを融合し機能改善したうえで統合している」(米澤氏)という。

 2016年度を迎え、「旧住金系が基幹システムに乗っていく段階に入る」(米澤氏)。一般管理系では、原価システムについて旧住金系の統合運用を4月に開始する。資機材調達が中心の購買システムは、これまで製鉄所などで個別に行っていた購入や工事発注、検収業務を全社統一し、分散系の新システムとして構築した。これにより全社12拠点での発注・契約・在庫管理を一元化。本社集中購買比率を高め、業務効率化や調達コスト削減につなげる。

 営業系基幹システムは、旧新日鉄のシステムを基盤とし、旧両社の営業特性や製造特性を生かした品種別のシステム構築を進める。営業系基幹システムの統合に合わせ、生産管理システムも段階的に統一化、標準化していく計画だ。

 統合先は、全社統一の分散系統合システムである。旧新日鉄にとっては、もともと分散・統合化の計画に着手しようとしていた矢先の経営統合だったので、「業務プロセスなど大きな変更なく、メインフレームから分散系に移行できた」(米澤氏)。一方、旧住金系の統合について米澤氏は、「システムが変わるので、商社などの対外系や、製鉄所などで仕事のやり方が変わる。統合購買や設備管理、営業系などの適用には慎重に取り組む」と話す。

 新システムは、これまで整備してきた統合基盤システム(NS-eSYS)上に構築していく。システム構築は、新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)と協力して進める。

 高度IT活用推進室は、新日鉄住金のIT部門やNSSOLのシステム研究開発センターなどからメンバーを集めて発足。IoTやAIを活用し、設備保全の高度化や人の安全監視、購買の最適化といったテーマに取り組む。「全社的に企画を調整して推進し、成果を横展開するエンジンの役割を担う」、米澤氏は高度IT活用推進室をこう説明する。