写真1●富士通の窪田雅己執行役員第一金融ビジネス本部長
写真1●富士通の窪田雅己執行役員第一金融ビジネス本部長
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 富士通は2016年3月30日、新しい金融ソリューション群「Finplex」を発表した。金融機関などがサービス提供するための共通API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)やソリューションを順次投入する。2016年度に100億円、3年で500億~600億円の事業規模を目指す。

 記者会見に臨んだ富士通の窪田雅己執行役員第一金融ビジネス本部長は、「Finplexは変革への第1歩だ」と力を込めた(写真1)。同社が狙うのは、「Systems of Record(SoR)」領域を中心としてきた金融機関向け事業を、「Systems of Engagement(SoE)」領域に拡大させることだ。SoRは主に“記録すること”を目的としたシステムで、勘定系システムが代表例だ。一方のSoEは、“顧客接点の強化”などを目的としたシステムを指し、PFM(個人資産管理)などのFinTechサービスが対象とする領域である。

写真2●富士通の時田隆仁執行役員金融システム事業本部長
写真2●富士通の時田隆仁執行役員金融システム事業本部長
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 富士通の時田隆仁執行役員金融システム事業本部長は、「今まで、金融サービスの提供者目線でSoRの領域を手掛けてきた。これからは、金融サービスの利用者目線でSoE領域に取り組んでいく」と、主戦場とするビジネス領域をシフトしていく姿勢をみせた(写真2)。FinTech分野において同社は、「Financial Innovation For Japan(FIFJ)」コンソーシアムを主催するなど、金融機関とスタートアップ企業とを仲介する役割を担ってきた。今後は自社でFinTechサービスを生み出し、金融機関向けに売り込むことを狙う。そのために16万人に上る従業員を対象に、富士通発のFinTechサービスを社内提供するなどし、社内検証を進める。

 Finplexが主に対象とするのは、UI/UX、オムニチャネル、アナリティクス、スマート営業という4領域だ。具体的なソリューション内容は現時点で不明だが、2016年5月に開催する「富士通フォーラム」で明らかにするとみられる。

 富士通がFinplexの先行事例と位置づけるのが、奈良県の南都銀行が手掛けるICキャッシュカード一体型クレジットカード会員向けのモバイル情報配信サービスだ。富士通は「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc」上で、認証やプッシュ配信などの機能を実現するAPI群を提供している。API群は同様のモバイルサービスを提供する際に共通して必要となるもので、南都銀以外の金融機関にも展開できる。同社によると南都銀のように、MetaArc上でFinTechサービスを提供している事例は既に複数あるという。

 富士通が目指すのは、金融機関のシステムにおいてSoRとSoEを連携させることだ。スタートアップ企業などが提供するFinTechサービスはSoE領域が中心だが、「SoRとSoEを掛け合わせることで、新たな金融サービスを生み出せる」(窪田執行役員)とする。