米Oracleは2016年3月24日(米国時間)、従量課金方式で提供するプライベートクラウドのサービス「Oracle Cloud at Customer」を発表した。同社のパブリッククラウドと同一構成のプライベートクラウドを顧客のデータセンター内に構築し、Oracleが運用も担当する。利用料金もパブリッククラウドと同じにする。

 プライベートクラウドの構築に使用するハードウエアやソフトウエアは、同社のパブリッククラウド「Oracle Public Cloud」で使用しているものと同じ。顧客のデータセンターに設置するハードやソフトはいずれもOracleの資産であり、ユーザー企業は設備投資をする必要が無い。使用料金は時間単位/月単位での従量課金で、使用しなかった場合は料金を支払う必要もない。

写真●米OracleのAmit Zaveryシニア・バイス・プレジデント
写真●米OracleのAmit Zaveryシニア・バイス・プレジデント
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 Oracleのパブリッククラウドが備えるデータベース(DB)やアプリケーションサーバーのサービスなども、このプライベートクラウドで利用可能。仮想マシンの運用管理などに用いる管理用API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)もパブリッククラウドと互換性がある。Oracleのクラウド事業を統括するAmit Zaveryシニア・バイス・プレジデントは、「パブリッククラウドとプライベートクラウドに完全な互換性があるため、顧客は二つのクラウドの間でシステムを自由に移行できる」と主張する(写真)。

 Zaveryシニア・バイス・プレジデントは、「パブリッククラウドの使い勝手の良さや料金に魅力を感じながらも、様々な制約からパブリッククラウドの利用をためらっていた顧客に向けたソリューションだ」と説明する。「システムの運用管理もOracleがサービスとして提供するので、顧客はシステムにパッチを適用したり、アップグレードしたり、データをバックアップしたりする必要は無い」(Zavery氏)。

 大手パブリッククラウド事業者の中で、パブリッククラウドと同一構成のハードとソフトをプライベートクラウド用に提供し、さらに運用管理サービスも提供するというのはOracleが初めて。米Amazon Web Services(AWS)はパブリッククラウドと同一構成のプライベートクラウドを米CIA(中央情報局)に提供しているが、これはCIA向けの特別対応だった。

 米Microsoftもパブリッククラウドの「Microsoft Azure」と同一構成のプライベートクラウドが実現できる「Microsoft Azure Stack」というソフトを販売しているが、この場合、ハードの調達やプライベートクラウドの運用管理はユーザー企業が実行する必要がある。Oracleのようにパブリッククラウドと同一のハード/ソフトでプライベートクラウドを構築し、運用管理もベンダー側が担当するという例は非常に珍しい。OracleのZavery氏は「業界初のソリューションだ」と主張する。

 Oracleが今回発表したプライベートクラウドのサービスは、従量課金方式で利用できるが、最低契約期間は存在する。OracleのZavery氏によれば「顧客ごとの交渉になるが、最低契約期間は3~5年になる見通し」という。