SAPジャパンは2016年3月23日、自動車向けのクラウド型データ分析アプリケーション「SAP Vehicle Insights」を第2四半期(4月~6月期)に国内で提供開始すると発表した。車載端末が収集する、速度や走行経路、燃料の残量などのデータをクラウド上で分析できる。バス会社などの自動車関連企業は、危険運転を防止したり、事故を未然に防いだりするサービスを構築できる。

 Vehicle Insightsは、SAPジャパンが提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)で、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)「HANA Cloud Platform」上に構築した。データベースや分析用のBI(ビジネスインテリジェンス)機能、地理情報データなどを持つ。提供価格は非公開だ。

写真1●、SAPジャパン バイスプレデント 自動車産業統括本部 本部長の小寺健夫氏。手に持っているのは車載端末
写真1●、SAPジャパン バイスプレデント 自動車産業統括本部 本部長の小寺健夫氏。手に持っているのは車載端末
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 発表会に臨んだ、SAPジャパン バイスプレデント 自動車産業統括本部 本部長の小寺健夫氏は「分析環境をあらかじめ用意することでユーザー企業は、自動車からデータを収集する『コネクテッドカー』のビジネスに参入しやすくなる」と語った(写真1)。

 Vehicle Insightsの利用イメージは次の通り。車載端末が取得するのは、位置情報や走行経路、速度、ガソリン状況、タイヤの空気圧など。Bluetooth Low Energyや3G回線などの通信機能でクラウド上に送信する。これらのデータを基に、Vehicle Insightsでは危険運転や部品の消耗状況などを可視化できる(写真2)。同社 インダストリークラウド事業統括本部 コネクテッドビークル事業開発ディレクター松尾康男氏は「市販の1万円程度の車載端末で、必要なデータは収集できる」という。

写真2●Vehicle Insightsのデモ画面
写真2●Vehicle Insightsのデモ画面
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 既にVehicle Insightsを使ってバスの危険運転を検知するシステム「Bus Safety Network」を開発し、国内のバス会社と実証実験を進めている。バスの速度や位置、急ブレーキなどのデータが運行管理の担当者にリアルタイムに通知される仕組みだという。

 SAPジャパンは自動車から収集できるデータを活用する「コネクテッドカー」の事業を拡大させる考えだ。「Vehicle Insights」など、コネクテッドカー事業に必要なアプリケーション群を企業向けに販売する「Vehicles Network」のサービスも日本国内で提供する計画を明らかにした。自動車メーカーや駐車場運営の事業者、ガソリンスタンドや保険会社など向けに提供する。