写真1●光産業技術振興協会 専務理事の小谷泰久氏
写真1●光産業技術振興協会 専務理事の小谷泰久氏
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図1●光産業全出荷額の分野別年度推移(出典:光産業技術振興協会)
図1●光産業全出荷額の分野別年度推移(出典:光産業技術振興協会)
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図2●光産業出全出荷増減額の分野別寄与度推移(出典:光産業技術振興協会)
図2●光産業出全出荷増減額の分野別寄与度推移(出典:光産業技術振興協会)
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 光産業技術振興協会(光協会)は2016年3月16日、2015年度の光産業動向調査の結果を発表した。同分野における国内生産額と全出荷額(日本企業の海外生産を含む)を発表しているのは本調査のみである。例えば政府の関連機関が予算を策定するときなどに活用している。

 前回の調査発表は国内生産額をメインに扱っていたが、今回からは全出荷額を前面に出すように方針を変更した。その理由を「産業動向の実態を表しているのが全出荷額。2009年から全出荷額の統計を取り始め、データがそろってきた」(光協会 専務理事の小谷泰久氏、写真1)とする。国内生産額の発表も継続する。「国内生産額は就業人口など雇用問題の指標になる」(小谷氏)。

 同調査は1980年から毎年実施しているもので、今回が36回目となる。今年度は光産業を「情報通信」「情報記録」「入出力」「ディスプレイ・固体照明」「太陽光発電」「レーザ加工・その他光加工装置」「センシング・計測」の7分野と「その他の光部品」に分類して調査した(図1)。

 今回発表したのは、2014年度実績、2015年度見込み、2016年度予測(定性的評価)である。2015年10月に313社に対してアンケート調査票を送付。2015年12月から2016年2月にかけて97社から回答を得た。これはほぼ例年通りの水準である。なお本調査では、アンケート調査に加えて、関連する団体のデータも活用している。例えば、太陽光発電分野では太陽光発電協会(JPEA)、固体照明分野では日本照明工業会の協力を得た。

緩やかな回復基調を示す情報通信分野

 情報通信分野の2015年度の全出荷額は対前年度比3.5%増の5367億円を見込む(1億円未満を切り捨て、以下同)。2014年度は同9.3%減と市場が縮小したものの、2015年度は若干持ち直した。けん引役は100Gビット/秒関連製品やデータセンター・基地局向け短距離製品である。

 同分野の項目で最大の「光伝送機器・装置」は同11.0%減の1802億円と、2年連続のマイナスで足を引っ張る格好になった。国内の主な通信事業者はサービスへの投資比率を高めており、ネットワークインフラへの投資を抑制していることが背景にある。小項目の「幹線・メトロ系」「加入者系」「光インターフェイスが装着できるルータ/スイッチ」「光ファイバ増幅器」がそろってマイナス成長となる中、唯一「映像伝送(CATV、CCTV等)」のみ同11.1%増とプラス成長が見込まれている。

 逆に光伝送機器・装置以外の項目では、同24.7%増の「光伝送リンク」などほとんどが増加となる。100Gビット/秒以上の光伝送リンクは2013年度から市場が形成され、基幹系やメトロ系のネットワークで利用が進み、最近ではデータセンターでの採用が始まっている。今後の成長が期待される項目である。

太陽光発電分野がついにマイナス成長へ

 情報通信以外の分野では、2011年度から成長を続けてきた「太陽光発電分野」がついにマイナスに転じた(図2)。2015年度見込みの全出荷額は同20.2%減の3兆7056億円。2014年度は同9.8%増だった。2012年7月に施工された「固定価格買取制度」(FIT)の制度変更や電力会社の買い取り拒否などが背景にある。FITは当初、3年程度は利潤が見込める水準の価格で再生可能エネルギー電力を買い取る制度としてスタートしたが、既にその3年が経過し、制度変更によって利殖目的のユーザーが離れていったことなどが理由の一つである。

 一方で、2013年度にプラスに転じた「ディスプレイ・固体照明分野」は2015年度も同6.0%増の6兆9139億円と増加傾向にある。ディスプレイ素子では、国内メーカーが強みとする、スマートフォンやタブレット端末向けの中小型液晶高精細パネルがけん引する。逆に固体照明器具・装置の全出荷額は同10.9%増の6440億円と伸びが鈍化する見込みである。

 光産業全体では、2015年度の全出荷額を同3.8%減の17兆4376億円と見込む。前年度割れとなったのは3年ぶりである。