米Google傘下の英DeepMindが開発した人工知能(AI)システム「AlphaGo」と韓国のプロ棋士Lee Sedol氏との5番勝負は、AlphaGoの4勝1敗で幕を閉じた。

 AlphaGoとLee氏の囲碁対決は、第1局から第3局をAlphaGoが連勝したが、第4局でLee氏がAlphaGoのミスを誘い、1勝。韓国で現地時間2016年3月15日に行われた第5局は、序盤、Lee氏が優勢だったものの、280手で同氏が投了し、AlphaGoが勝利を収めた。

 コンピュータと人間の対戦では、1997年に米IBMのスーパーコンピュータ「Deep Blue」がチェスの世界チャンピオンGarry Kasparov氏を破ったことなどがよく知られている。しかし囲碁は局面数が無数にあるとされ、コンピュータプログラムが人間のプロ棋士に勝つにはあと10年かかるだろうと、AI専門家らは予測していた。

 DeepMindが1月27日の英誌「Nature」で発表した論文によると、囲碁の場合、サーチツリーを構築する従来のAI手法では通用しないため、AlphaGoは異なるアプローチを取り、ディープラーニング(深層学習)を組み合わせた。盤上の石の配置などを情報としてインプットし、12層のニューラルネットワークによって、次に打つべき手を判断する。人間同士の対局の3000万手についてトレーニングしたのち、新たな戦略を見つける訓練や、ニューラルネットワーク同士で戦わせるなどの強化学習を重ねた(関連記事)。

 DeepMindは、今回AlphaGoが獲得した賞金100万ドルを、UNICEF(国連児童基金)やSTEM(科学、技術、工学、数学)関連の慈善事業、囲碁関連団体に寄付する。

 DeepMindのDemis Hassabis最高経営責任者(CEO)は、Lee氏との対戦によって判明したAlphaGoのいくつかの弱点を今後修正するとし、「AlphaGoのコンピュータアルゴリズムは、いつの日か、医療から科学にわたるすべての課題に使われるようになるだろう」と述べた(米New York Times)。

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