米ヴイエムウェアでSDDC(ソフトウエアデファインドデータセンター)部門担当上席副社長兼ゼネラルマネージャを務めるラグー・ラグラム氏(写真)は2016年3月11日、日経BP社主催の「日経BP Cloud Days Tokyo 2016」で講演した。SDDC製品を使ったマルチクラウドの将来像について解説した。同イベントは「ビッグデータEXPO 東京 2016」「Security & Governance 2016東京」「IoT Japan 2016・東京」「Mobile & Wearable 2016春・東京」を併催している。
デジタルビジネスへの変革があらゆる業界で起こっている、とラグラム氏は言う。モバイル端末などを通じて自社のサービスを届けるといった具合だ。このことは、すべての企業がソフトウエア企業になることを意味している。ラグラム氏は、米GE(ゼネラル・エレクトリック)会長の「朝起きたらソフトウエア企業になっていた」というコメントを引用。こうした変革を米ヴイエムウェアが推進しているとアピールする。
デジタルビジネスの多くは、IT基盤としてクラウドサービスを利用する。ここで大切なことは、これら個々のクラウドサービスがサイロ化しないようにすることであるとラグラム氏は強調する。同社のSDDC製品群を使えば、複数のパブリッククラウドやプライベートクラウドが混在したマルチクラウド環境を、あたかも一つのクラウドであるかのように管理できるようになるという。
まずはプライベートクラウドを適切に構築せよ
企業が使っているアプリケーションの80%以上は、現在でもプライベートクラウドの上で動いている。このため、まずは適切なプライベートクラウドを構築し、運用体制を整備することに注力する必要がある。
ラグラム氏は、ユーザー企業がプライベートクラウドを構築する理由を、大きく三つ挙げる。
第一の理由は、IT部門の自動化である。クラウドの導入によって運用管理の作業を減らす。新日鉄住金ソリューションズは、ITをバックエンドで自動化しているという。米国のレンタカーの会社では、サーバーを拡張するのにかかる時間を数時間から数分に短縮した。
二つめの理由がDevOpsへの対応。新規のアプリケーションを迅速かつ容易に開発できるようにインフラを整備する。ホテル業界のチョイスホテルズインターナショナルは、モバイル端末を用いたチェックイン/チェックアウトといった新規アプリケーションの展開にかかる時間を、数週間から数分へと短縮した。
最後の理由が、サーバーやネットワークを分離独立させてセキュリティを確保するマイクロセグメンテーションを実現することだ。保険業界の太陽生命保険は、ネットワークのトラフィックを適切に制御することによって、エンドユーザーのデスクトップ環境を安全に利用できるようにする。
SDDC製品がプライベートクラウド構築の標準になる
ラグラム氏は講演の後半で、SDDCの技術トレンドを紹介した。現在のSDDC製品で注目を集めているのがハイパーコンバージドインフラストラクチャーである。「今後のプライベートクラウドの標準になっていく」(ラグラム氏)。
ハイパーコンバージドインフラストラクチャーは、汎用PCサーバーにハイパーバイザー(サーバー仮想化ソフト)と分散ストレージソフトを載せたもの。スケールアウトによってプライベートクラウドの規模を拡大できる。
直近の2016年2月には、分散ストレージソフトの新版として、Virtual SAN(VSAN) 6.2を発表した。インライン重複排除と圧縮が可能になり、オールフラッシュ構成に向くようになった。重複排除と圧縮でストレージに書き込まれるデータ量を削減することによって、1Gバイト当たり1ドルで利用できる。
ハイパーバイザーの上では、ネットワークの仮想化技術も利用できる。これにより、サーバー、ストレージ、ネットワークのすべてを仮想化できる。同社はネットワークの仮想化機能として、VMware NSXを提供している。ハイパーバイザー上で仮想スイッチを動作させ、アクセス制御機能によって東西トラフィック(仮想サーバー同士のネットワーク通信)を安全に制御できる。
SDDCのの利用企業である米ディレクティービーは、フロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオのボクシング中継において、300万人という史上最大規模のPPV(ペイパービュー)を実現した。別の事例として、米トリビューン・メディアは、54カ所のデータセンターをラック7本に集約し、500人以上いたシステム担当要員を40人台に減らした。