写真●オートバックスセブン、執行役員、藤原伸一氏
写真●オートバックスセブン、執行役員、藤原伸一氏
(写真:細谷 陽二郎)
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 カー用品総合専門店をフランチャイズ展開しているオートバックスセブンで執行役員を務める藤原伸一氏(写真)は2016年3月11日、日経BP社主催の「日経BP Cloud Days Tokyo 2016」で講演した。同社が取り組んだマーケティング施策の背景と効果について解説した。同イベントには「ビッグデータEXPO 東京 2016」「Security & Governance 2016東京」「IoT Japan 2016・東京」「Mobile & Wearable 2016春・東京」を併催している。

 オートバックスセブンは、2013年ごろから顧客データを活用したマーケティングに取り組んできた。2800万人の顧客データを分析し、購買行動などに応じて6個のクラスターに分類。個々の顧客に適したDM(ダイレクトメール)を適切なタイミングで送信するなど、顧客ごとのアプローチでマーケティング施策を実行している。

 同社が顧客データに基づくマーケティング基盤を導入した背景には、ビジネス環境の変化がある。自動車市場は成熟期に入っており、新車販売台数はバブル経済期の800万台から500万台へと減ったという。若者の自動車離れなどライフスタイルも多様化。インターネット販売が拡大するなど購買ルートも変わった。事実、同社が運営するECサイト「オートバックス・ドットコム」は伸びている。

 こうした中で同社が抱えていた課題は、マスコミ広告などを利用したマスプロモーションの効果が低下していたことである。従来のRFM分析(最新購入日、購入頻度、購入金額の三つの指標で顧客を分類する手法)には限界があると感じ、個々の顧客データに着目したマーケティングへの取り組みを開始した。

顧客を6個のクラスターに分類、適切なマーケ施策を実行

 新たな取り組みでは、まず顧客データをDWH(データウエアハウス)に一元化するところからスタートした。続いて、こうして蓄積したデータに対し、統計解析ツールで分析し、キャンペーン施策管理ツールでキャンペーン施策を実行できるようにした。

 統計解析ツールによって、会員を6個のクラスターに分類した。また、マーケティング施策を実行するターゲットを抽出する段階では、購入確率が低いと判断した顧客を除き、マーケティング施策の成功率を上げて費用を下げている。

 藤原氏は、マーケティング施策の実際の成果を紹介した。同社は冬商戦時期に300万件から400万件ほどのDMを送信している。蓄積したデータを基にDMを送る顧客層と送付するタイミングを工夫した結果、購入率を高めることができた。2013年度、2014年度と連続して購入率が上がり、2014年度は36.5%の購入率を達成した。2015年度は暖冬にも関わらず33%の購入率を維持できた。

 冬商戦だけでなく、1年を通じて定期的に送っているDM(全15種類)においてもマーケティング施策の効果があった。1年間を通じてどんなDMをどのタイミングで送るのかをパッケージ化し、顧客を分類したセグメントごとにこれを使い分けた。この結果、会員数は微増しているものの、2014年度と2015年度の比較で、DM送信にかかった費用を大きく削減できた。

今後はWeb行動履歴も活用してカスタマージャーニーを構築

 データベースマーケティングに取り組んだ結果として、顧客の理解が深まったという。「多様なデータ分析によって、顧客の顔が見えるようになった」(藤原氏)。データ分析も高速化でき、結果がすぐに分かるようになった。異なるDMを用いたA/BテストなどによってPDCAサイクルを回すことで、データ分析の精度も向上した。

 今後の展開の予定として藤原氏は、Webサイトでの行動情報、具体的には製品やサービスに関する情報を活用するとしている。すでに構築済みの顧客データと購買履歴データから成るDWHと、それぞれの顧客によるWebサイト上での行動を組み合わせることで、より精度の高いマーケティング施策が可能になるという。

 現在の会員登録数は2800万人。このうち、過去3年以内で購入している顧客は1500万人。さらにこの中で、アクティブに利用してくれている優良会員は860万人。これを増やしていくとしている。