画面●河川情報システムWeb画面。河川事務所では1日3回、インターネット経由で河川水位や水位の変化を確認する
画面●河川情報システムWeb画面。河川事務所では1日3回、インターネット経由で河川水位や水位の変化を確認する
(出所:富士通)
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図●AR技術を活用して水位を計測するスマートフォンアプリ
図●AR技術を活用して水位を計測するスマートフォンアプリ
(出所:富士通)
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 富士通は2016年3月9日、AR(拡張現実)を使って水位を計測する河川情報システムをインドネシア共和国で構築したと発表した。河川水位センサーを屋外に設置しなくても水位を測れるようになる。現地の河川管理事務所と共同で、2月23日から3月18日まで、本システムの実用性と有効性を評価する実証実験を行っている。

 スマートフォンアプリで計測した河川の水位情報などを富士通のデータセンターで集約し、各観測地点の水位変化を可視化したグラフとともに地図上にプロットするシステムである(画面)。日本国内での河川情報システムの開発実績とノウハウを生かし活かし、富士通が富士通インドネシアとともに構築した。

 最大の特徴は、水位を計測するスマートフォンアプリにAR技術を採用したこと()。富士通のAR基盤製品「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server」を使っている。河川流域に設置されたARマーカーをスマートフォンのカメラで読み込むと、河川写真上にスケールが重畳表示される。ここで画像の水面をタップして水位を数値化する。

 システムの稼働場所は、インドネシア共和国の北スラウェシ州マナド市。実証実験では、マナド市内の河川流域1カ所にARマーカーを設置した。防災に役立つ精度の情報収集が可能かどうかの検証と、河川管理事務所の関係者が河川水位の変化を迅速に把握・共有することが状況判断に有効かどうかの検証を行う。

 背景には、インドネシア共和国では洪水による被害が多いという状況がある。河川水位の監視と、洪水警戒水位となった際の迅速な情報共有、迅速で的確な避難指示が課題となっている。ただし、河川水位センサーを屋外に設置して水位変化を観測するシステムは装置のメンテナンスにコストがかかるため、インドネシアでは継続的に活用することが難しかった。安価なスマートフォンとAR技術で水位を計測できれば持続的に活用できると考え、今回の実証実験を決定した。