みずほ銀行、富士通、富士通研究所は2016年3月8日、国境を越えて証券を取引する「証券クロスボーダー取引」にブロックチェーン技術を適用することで、証券取引の決済にかかる時間を短縮する実証実験を行ったと発表した。

 この実証実験は、証券の売買が成立する"約定"から、証券と代金を交換する"決済"まで従来は3日かかるところを、即日で決済可能にすることを目指したもの。実験の結果、「決済業務の時間短縮が可能なことを確認」(3社ニュースリリースより)したという。

 一般に証券クロスボーダー取引では、国内と海外の証券会社・銀行・清算組織が約定/決済情報を電文で送り合い、互いの情報に食い違いがないかを確認することで決済を成立させている。この確認作業のため、約定から決済まで3日を要していた。これまでに集中管理システムによるデータの共有も検討されたが、システムの運用管理コストが大きくなるなどの問題があり、実現できなかったという。

図●証券クロスボーダー取引へのブロックチェーン技術の適用イメージ
図●証券クロスボーダー取引へのブロックチェーン技術の適用イメージ
(出所:みずほ銀行、富士通、富士通研究所)
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 今回の実証実験は、誰もがアクセスできるパブリックチェーンであるビットコインに株式などの資産情報を記録する技術「オープン・アセット・プロトコル(Open Assets Protocol)」を、複数の限られた組織が運用するコンソーシアムチェーンに応用したもの。オープン・アセット・プロトコルに基づいて1件の約定情報(対象銘柄、株数、通貨コード、金額、決済国、決済方法、決済日)を1個のブロックとして記録し、それを時系列につなぐことでブロックチェーンを構成した。

 実験は2015年12月~2016年2月まで、富士通が構築したクラウド環境上のシステムで実施した。この結果、このブロックチェーンに記録した約定情報は、改ざんが難しい形で複数の組織間で共有できることを確認した。この約定情報に基づいて決済を行うことで、約定から決済までの時間を短縮できるという。

 3社は2016年3月以降、同取引へのブロックチェーン技術適用を目指した方針を検討するとしている。