米Appleが電子書籍の価格を不正操作したとされる問題で、米最高裁判所は現地時間2016年3月7日、Appleの上訴を退けたことを明らかにした。これにより、Appleが不正な価格調整により独占禁止法に違反したとする下級裁判所の判断が維持される。

 Appleは2012年4月に、米News Corporation傘下のHarperCollins Publishers、ドイツVerlagsgruppe Georg von Holtzbrinck傘下のMacmillan、英Pearson傘下のPenguin Group、フランスLagardere傘下のHachette Book Group、米CBS傘下のSimon & Schusterと共謀して電子書籍の価格を不当につり上げたとして米司法省(DOJ)に訴訟を提起され、2013年7月に米ニューヨーク州南部の地裁で独占禁止法違反の判決を受けた。Appleは控訴したが、米連邦第2巡回区控訴裁判所は2015年6月、地裁の判断を支持する裁決を下した(関連記事:Apple、控訴裁で主張認められず、電子書籍の価格操作問題で)。Appleはこの裁決を不服として、最高裁に裁量上訴を申し立てていた。

 今回、最高裁がAppleの求めを退けたため、Appleは2014年7月の和解合意に基づき、電子書籍購入者に4億ドルと、訴訟費用など5000万ドルを支払うことになる(関連記事:Appleの電子書籍を巡る集団訴訟、4.5億ドルの和解案に仮承認)。なお出版5社はすでにDOJと和解しており、合計1億6600万ドルを支払っている。

 Appleは嘆願書で「多数の消費者が電子書籍を購入してiPadで読むための当社のプラットフォーム立ち上げは、電子書籍市場の競争を劇的に活性化し、著者、出版社、書籍購入者に恩恵をもたらした。Appleの市場参入後、世に出る作品が増え、全体的な価格は低下した」と電子書籍業界に貢献したことを強調したが、最高裁に取り上げてもらえなかった。Appleの再審理の求めが認められなかったことは、電子書籍販売で独占的地位を築いていた米Amazon.comにとっての勝利になると、米New York Timesは報じている。

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