大阪ガスでデータ分析担当者を率いる河本薫情報通信部ビジネスアナリシスセンター所長は2016年3月4日、虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で開催中の「データサイエンティスト・ジャパン2016」の講演で、IoT(モノのインターネット)活用を成功させるための勘所を明らかにした(写真)。同センターが手がける案件は、「IoT活用に関連した案件がここ最近で一番多くなっている」と河本所長は話す。

写真●大阪ガスの河本薫情報通信部ビジネスアナリシスセンター所長
写真●大阪ガスの河本薫情報通信部ビジネスアナリシスセンター所長
(撮影:古立 康三)
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 IoT活用の案件が増えているのは、大阪ガスがメンテナンスすべき多くの設備や器具を所有しているからだ。これら設備や器具にセンサーを取り付けてデータを収集・分析し、異常検知や異常監視、故障予知、故障診断を実現させる取り組みを進めている。これら実際の案件を通じて得た、IoT活用を成功させるための勘所は大きく3つある。

 まず1つは、問題点を具体化すること。IoT活用の取り組みでよくある失敗例は、データ分析で故障予知が可能になると分かっても、現場からは「1時間前に故障予知できても間に合わない」「故障予知できても故障前に客先を訪問できない」といった意見が出て、議論が先に進まないことだ。

 そこで河本所長が率いるビジネスアナリシスセンターでは、IoT活用のパターンとして「異常検知」「異常監視」「故障予知」「故障診断」の4つに分類。その上で、現状業務をヒアリングして、どのパターンに取り組めば現状業務を効率化できたり変革できたりするのかを、見極めていく。さらに、見極めたパターンを実践した場合、現場でどういった問題が起こり得るのかを、現場の社員と一緒に議論していく。

 2つめは、数学的に優れた分析結果ではなく、現場の社員が納得できる分析結果を示すこと。高度な数学的な手法を駆使して的中率の高い分析結果を示しても、それだけでは現場の社員は納得しない。現場には、これまで培ってきた経験や勘があるからだ。