写真●NEC、ビッグデータ戦略本部 兼 情報・ナレッジ研究所エキスパートの本橋洋介氏
写真●NEC、ビッグデータ戦略本部 兼 情報・ナレッジ研究所エキスパートの本橋洋介氏
(撮影:古立 康三)
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 「ディープラーニングは万能ではない。分析手段の選択肢が増えるので、データサイエンティストの必要性がこれまで以上に増す」――。NECでビッグデータ戦略本部兼情報・ナレッジ研究所エキスパートを務める本橋洋介氏(写真)は2016年3月4日、ITセミナー「データサイエンティスト・ジャパン2016」で講演した。流行しているディープラーニング(深層学習)の適用例と、ビジネスに適用する際の注意点を説明した。

 冒頭で本橋氏は、現在は人工知能(AI)の第三次ブームであり、最大の理由が機械学習にあると紹介。コンピュータが将棋で人間に勝つといった話題が世間を騒がせている点に触れた。前回の第二次ブームの主役は知識ベースのエキスパートシステムだったが、これはルールを作ったりメンテナンスしたりするのが面倒だったので廃れたという。機械学習は運用が楽なのではやっている。

 機械学習の中でも、運用が特に楽な技術がディープラーニングである。機械学習にとっての職人技は特徴量のデザインで、トマトを識別するのにヘタの色を特徴量にするといったことを決める。ディープラーニングでは、特徴量のデザインも機械が代替する。

 NECは2015年8月、ディープラーニングを利用したデータ解析ソフト「Advanced Analytics - RAPID機械学習」(関連記事:NEC、ディープラーニングを応用した画像監視ソフトと人材仲介ソフトを出荷)を出荷した。画像・映像解析、テキスト解析、人材マッチングなどの用途で、高速に処理ができる。他のエンジンとの比較では、ある処理にかかった時間が888秒から4秒に、メモリー使用量は2200Mバイトから32Mバイトに減ったという。誰でも簡単に使えることも特徴で、お手本となるデータを学習させるだけで、判断モデルを自動で生成する。

 続いて本橋氏は、ディープラーニングの適用例をいくつか紹介した。防犯分野では、監視カメラ画像を学習させておけば、監視員の役割を担える。工場では、良品と不良品の画像を学習させておけば、監視カメラ映像で不良品を検知できる。アルゼンチンの警察の監視カメラ事例では、ひったくり犯を見つけるためにバイクの二人乗りを検知しているという。