「いまやデータは経営判断に不可欠の存在。データ活用は企業が取り組むべき重要なテーマだ。ただし、現状の業務活動のうちデータ化されているものは15%ほどしかない。残りの85%はコミュニケーションなどの非構造化データが占める。そういった状況でデータ化されたものだけを見て経営判断するのは、間違っている」――。

 富士ゼロックスの山本忠人代表取締役会長は2016年3月4日、虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で開催中の「データサイエンティスト・ジャパン2016」の講演の冒頭、自社で調査した数字を挙げながら、こう警告した(写真)。

写真●富士ゼロックスの山本忠人代表取締役会長
写真●富士ゼロックスの山本忠人代表取締役会長
(撮影:古立 康三)
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 企業がデータ活用を始めるには、まずは日々の業務活動からデータを集める必要がある。その際に注意すべき点は、「業務の現場を整理整頓したうえで、データを集めるということだ」と、山本会長は400人を超す聴衆に向かって説いた。「そうしないと、誤った経営判断を下してしまう」。

 なぜ誤ってしまうのか。それは、データが社内の現場ごとに個別最適化されたものだからだ。山本会長が説く業務の「整理整頓」とは、業務の「見える化」と「標準化」を意味する。

 業務の見える化によってデータ化が進み、既存業務の中に気付かなかった無駄やばらつきを発見できるようになる。これが生産性の改革につながる。業務の標準化によって、これまでばらばらだった社内用語や作業内容、プロセスなどが統一される。これは集まってくるデータが統一される状況を生み、全社でデータの共有を後押しする。

 業務の「見える化」と「標準化」によって初めて「業務のデータ化」が進み、集められたデータは経営判断に利用できる状態になる。あとは、「社員がセンサーとなってデータを集めてくる。それをITで瞬時に集計して経営判断に生かしていけばよい」と山本会長は指摘する。