写真●ファーストリテイリングの玉置肇グループ執行役員CIO
写真●ファーストリテイリングの玉置肇グループ執行役員CIO
(撮影:井上 裕康)
[画像のクリックで拡大表示]

 「日経コンピュータの2016年1月7日号で『デジタル化するユニクロ』というタイトルの特集を掲載していただきました。しかし正確には、『デジタル化する』ではなく『デジタル化せざるを得ない』のです」。

 カジュアル衣料品店「ユニクロ」を手掛けるファーストリテイリングの玉置肇グループ執行役員CIO(写真)は2016年2月29日、東京・目黒の目黒雅叙園で開催された「イノベーターズセミナー」(日経BP社 日経ITイノベーターズ主催)で講演し、こう語った。日経コンピュータの特集タイトルと同じく「デジタル化するユニクロ」と題して、同社のデジタル戦略について話した。

 なぜ「デジタル化せざるを得ない」のか。「ZARA」を運営するスペインのインディテックス、スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)、米ギャップといった世界の競合の売上高と営業利益率を示し、「我々は挑戦者だから」と玉置氏は言う。

 グローバル化で後れを取っていることについても危機感をあらわにした。「インディテックスやH&Mは自国の市場が小さいため、早々から世界に進出した。一方、当社の場合は、国内の比率がいまだに高いため、グローバル化を急いでいる」(玉置氏)。

 こうした現状をデジタル化で打開することを狙う。玉置氏は「デジタル技術の進歩は、我々のような挑戦者に千載一遇のチャンスをもたらす。服飾産業は古い産業形態だからこそ、デジタル化で“情報サービス産業”に生まれ変わる」と言い切る。

 デジタル化を推進するため、2015年9月にアクセンチュアとの合弁会社「ウェアレクス」を設立。デジタルテクノロジーを活用した新サービスの研究・開発・導入を担う。

 このウェアレクスとファーストリテイリングとで「新しい産業を創る」と玉置氏は意気込む。具体的には、「商品企画・数量計画の変革」「物流拠点網の再構築・スマート化」「顧客起点のサービスプラットフォーム・マーケティング」などを実践する。「一つひとつを見れば、既に他社がやっていることかもしれない。しかし、我々はこの1~2年間ですべてを一気に進める」(玉置氏)。

 最後に玉置氏は変革を進める際の心構えとして「過去の成功体験は捨て去れ」と柳井正会長兼社長の言葉を引用し、講演を終えた。講演後の質疑応答では、人工知能の活用構想や、協業相手となる企業の選定の仕方などについても語った。