米政府が犯罪捜査に関連する「iPhone」のロック解除を米Appleに要請している問題で、米ニューヨーク州東部の米連邦地方裁判所は現地時間2016年2月29日、ロック解除を拒否するAppleの主張を認める判決を下した。Appleは米カリフォルニア州でも同様のiPhoneロック解除問題で当局と対立しており、ニューヨーク州の裁決はカリフォルニア州での係争に影響を及ぼす可能性があると複数の米メディア(New York TimesCNETなど)は報じている。

 米電子プライバシー情報センター(EPIC)などが入手した裁判所資料(PDF文書)によると、米司法省(DOJ)は昨年10月、薬物捜査で押収したiPhoneのロック解除をAppleに要求する訴訟をニューヨーク州で起こし、Appleはこれに対してユーザーのプライバシー保護を理由に意義を申し立てていた。今回同州地裁のJames Orenstein判事は、Appleの主張を支持。DOJが要請の根拠としている1789年制定の「All Writs Act(全令状法)」について、政府は同法を誤って解釈しているとし、「適用されれば合憲性に疑いが生じる」との判断を示した。

 カリフォルニア州では、昨年12月に発生した銃乱射事件の犯人が所有していたiPhoneを巡り、米連邦捜査局(FBI)がAppleに協力を要請。同州裁判所はAll Writs Actに基づいてiPhoneロック解除の裁判所命令を2月16日に下し、Appleは2月25日、同命令を無効にするよう正式に申し立てた(関連記事:Apple、「iPhone」ロック解除の裁判所命令に正式申立)。Appleは、当局が求めるようなセキュリティ迂回ツールを一度作ってしまうと、多数のiPhoneユーザーをプライバシー侵害のリスクにさらすことになり、「危険な前例になる」と主張している。

 前述のメディアによると、DOJはニューヨーク州地裁の判決について「失望しており、判事に見直しを求める」とし、「今後も司法制度を使って、iPhone内の情報を入手できるよう努める」と述べた。一方Apple幹部は、「iPhoneのロック解除は合憲性が問われる問題であり、米国議会に委ねるべきであることを明示する判決だ」とコメントした。