図1●3月1日に音声5ch、動画1chでスタート(東京マルチメディア放送の説明資料、以下同)
図1●3月1日に音声5ch、動画1chでスタート(東京マルチメディア放送の説明資料、以下同)
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図2●バージョンアップスケジュール
図2●バージョンアップスケジュール
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図3●V-Alertの仕組み
図3●V-Alertの仕組み
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 エフエム東京が中心となって設立したV-Lowマルチメディア放送の事業全般を推進するホールディング会社であるBIC、基幹放送局提供事業者(いわゆるハード事業者)となるVIP、関東・甲信越広域圏の移動受信用地上基幹放送局(いわゆるソフト事業者)となる東京マルチメディア放送らは2016年2月29日、福岡、大阪、東京で3月1日の12時にプレ放送をスタートすると発表した。

 これに合わせて、記者説明会が2月29日に開催された。東京マルチメディア放送 代表取締役社長の藤勝之氏は、スタート時の特徴として、「音声多チャンネル」「高音質」「パケット(通信料)不要」「無料放送」を挙げた。

 チャンネル数については、当初「音声5ch」「映像1ch」からスタートする(図1)。音声では、CP(コンテンツプロバイダー)として、TOKYO SMARTCASTが1ch(TS ONE)、 アマネク・テレマティクスデザインが1ch(Amanekチャンネル)を提供。マルチメディア放送会社が、「i-dio Slection」として、ジャズ、クラシックなど3chを用意する。

 さらに、動画として「クリエイターズ・チャンネル」を用意する。クリエイターとともに創りだすオリジナル映像チャンネルとして提供する。ショートムービー・アニメを中心に、新たな映像表現を発掘していく。 このほか、近畿広域圏、九州・沖縄広域圏では、それぞれの地域のローカルチャンネル「KANSAIチャンネル」と「Qリーグチャンネル」が放送を開始する。

 なお、「TS ONE」と「Amanekチャンネル」がプレ放送の位置づけ。i-dio Slectionなどは本放送という位置づけで、3月1日にスタートとする。

 同放送の受信方法としては大きく2種類を用意する。一つは、モニター登録者5万人に配布したi-dioチューナー(スマホなどに無線LAN接続して使う外付けチューナー)である。スマホには、受信アプリをダウンロードして使う。Android版は3月1日にダウンロード開始、iOS版も3月上旬の公開を見込む。

 もう一つの受信方法は昨年12月に発売したSIMフリースマホ「i-dio Phone」(i-dioやワンセグのチューナー内蔵)を使う方法である。「量販店からは、今後、特別推奨機器として販売してもらえると聞いている」(藤氏)といい、今後の販売の伸びに期待する。

 藤氏は、「進化する放送」である点も強調した。V-Lowマルチメディア放送波は音声・映像に限らずデジタルデータであれば、送信する情報の種類は限定されていない。流す情報の種類を拡充し、それに合わせて受信アプリをバージョンアップすることで機能を追加できる。i-dio放送によって受信アプリそのものを上書きすることも可能。

 進化する放送として、想定されるサービスとして、「クーポン」「マイル」「ゲームアイテム」「Web」「認証データ」「電子チケット」「電子雑誌」「電子チラシ」「地図(差分をリアルタイムで書き換え)」「IoT制御データ一斉同報」などを挙げた。

 さらに、「この間、特定受信に関する企業から様々な要望があった」(藤氏)といい、放送免許の一部を電気通信事業に転用してこうしたニーズを解決するサービスを開発していく方針。いわゆる「不特定多数」に向けた放送ではなく、特定多数に向けた通信用途を開拓していく。

 スケジュールとしては、「3月~5月」「6月~9月」「10月以降」の大きく3ステップを想定する(図2)。第1期(3月~5月)は、i-dioの知名度獲得期間と位置づける。この期間では、多チャンネルと高音質というわかりやすい特徴をアピールしていく。

 第2期(6月~9月)はコンテンツ訴求期と位置づけて、CPごとに個別コンテンツを具体的に訴求していく。「10月以降、順次CPが増えていくことを想定しており、ここからフルパワーで推進していく」(藤氏)という。8月には、ハイレゾ級高音声として、「HD Sound」対応を開始する。

 端末の普及に向けては、既にモニター向けにi-dioチューナーを配布しているが、これからさらにモニターを追加募集してさらに5万台を配布する計画。また、通信による補完放送(IPサイマル)を5月に開始する。難視聴対策として、電波が届かないエリアなどでも通信を使って同じサービスを体験できるようにする計画である。まずは、放送用に多重した信号を、そのまま通信経由で流していく。このため、音質なども放送と同じクオリティになる。

 さらに、「V-Alert」の仕組みを説明した(図3)。V-Alertは自治体自らがi-dioを活用して住民に災害情報を緊急発信することを可能にする。専用受信機を地域住民に無償配布して、緊急時にはi-dio放送を使って強制起動し知らせる。この4~5年の間に、自治体の1/3が採用してもらえるという見通しを立てて、これを目標にする方針。

 この日の会見では、TOKYO SMARTCASTとアマネク・テレマティクスデザインが、それぞれ主要な番組のイメージやタイムテーブルを説明した(発表資料を参考)。

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