米当局が銃乱射事件の捜査のために「iPhone」のロック解除を米Appleに求めている問題で、Appleは現地時間2016年2月25日に裁判所命令を無効にするよう正式に申し立てたと、複数の米メディア(New York TimesRe/codeなど)が報じた。

 米連邦捜査局(FBI)は昨年12月に米カリフォルニア州サンバーナディーノで起きた銃乱射事件の捜査のために、犯人の「iPhone 5c」のロック解除に協力するようAppleに要請しており、同州中部の連邦裁判所がAppleに対してロック解除命令を2月16日に発した。Appleはすぐに、これを拒否する意向を示したTim Cook最高経営責任者(CEO)の書簡を公開(関連記事:Apple、iPhoneロック解除の裁判所命令を拒否、銃乱射事件捜査で)。数日後に、同社の姿勢を説明する文書をWebサイトに掲載し、iPhoneのセキュリティ機能を迂回するツールを作成することは技術的には可能だが、「危険な前例になる」との懸念を強調した(関連記事:Apple、政府に命令取り下げと委員会設置を提案 iPhoneロック解除問題で)。

 Appleが正式に申立を行ったのは、裁判所命令に対する回答期限の1日前。文書共有サイト「Scribdで公開された提出資料によると、Appleは「テロリストや犯罪者に対して正義を追求する法執行機関の努力を強く支持する」とした上で、「しかし、今回受けた前例のない命令は、法的に支持すべきところが見当たらず、憲法を侵害している」として、裁判所命令を取り下げるべきだと主張。言論の自由を保障する憲法修正第一条に反するだけでなく、憲法修正第五条で保障されているAppleの適正手続の権利も侵害すると述べた。

 また、政府の「All Writs Act(全令状法)」の解釈は誤りだとし、「Appleが今回の命令によりセキュリティ機能を回避して新たなアクセスを作り出すコードの記述を強いられるのであれば、マイクやビデオカメラの記録機能や、スマートフォンの位置サービスを作動させて当局の盗聴を助けるコードを政府がAppleに求めるのを、誰も止められなくなる」と指摘した。

 政府はセキュリティ迂回ツールを問題のiPhoneにしか使わないとしているが、「いったん作り出してしまうと、あらゆるデバイスに対して何度も使われる可能性がある。これは、危険な前例を作ることになる」と、同資料はCook氏の言葉を繰り返した。