米Appleは、銃乱射事件の犯人が使っていた「iPhone」のロック解除を求める裁判所命令に抵抗している件で、あらためて同社の姿勢を説明する文書を、現地時間2016年2月22日までにWebサイトに掲載した。その中で同社は、国家安全保障やプライバシーについて協議する委員会の設置を提案している。

 米連邦捜査局(FBI)は昨年12月に米カリフォルニア州サンバーナディーノの福祉施設で起きた銃乱射事件の捜査のために、犯人の「iPhone 5c」のロック解除に協力するようAppleに要請している。同州中部の連邦裁判所がAppleに対するロック解除命令を2月16日に発したが、Appleはこれを拒否する意向を示している(関連記事:Apple、iPhoneロック解除の裁判所命令を拒否、銃乱射事件捜査で)。

 FBIでは、専門家らが問題のiPhone 5cのロック解除を試みたが成功していない。パスワード入力に10回失敗すると、セキュリティ機能が働いて端末内のデータが永久に消滅する可能性がある。

 Appleによると、政府は機械的にパスワード入力を繰り返し試みる、いわゆる「ブルートフォース攻撃」を可能にする新たなOSを作るよう求めてきたという。こうしたOSを作ることは技術的には可能だが、「危険な前例になる」とAppleは懸念を表明。「こうした強力なツールが確実に悪用されないように、あるいは悪人の手に渡らないようにするには、決して作り出さないことだ」と述べている。

 またAppleは、「われわれはテロリストをまったく支持しない」と強調し、情報提出やアドバイスといったロック解除以外の捜査協力をしてきたことを明かした。さらに、「最良の道は、政府が『All Writs Act(全令状法)』のもとの要請を取り下げ、米国議会の一部で意見が上がっているように、機密情報や技術、市民の人権などに関する専門家からなる委員会を結成し、法執行、国家安全保障、プライバシー、個人の自由について話し合うことだ。Appleはそうした取り組みに喜んで参加する」と締めくくった。

 Appleは、裁判所命令に対する正式な回答を2月26日までに提出しなければならない。米司法省は「Appleの命令拒否は、同社のブランドマーケティング戦略とビジネスモデルへの配慮に基づいたものだ」と批判。FBIのJames Comey長官は「裁判所命令は、前例をつくるためではない。犠牲者と正義のためだ」との声明を発表した(米New York Timesの報道)。一方、米Google、米Facebook、米Twitterをはじめとする企業や人権擁護団体などがApple支持を表明している(米MacRumors)。