米Appleは、銃乱射事件の捜査のために「iPhone」のロックを解除せよとの裁判所命令を拒否する意思を明らかにした。同社は現地時間2016年2月16日、WebサイトにTim Cook最高経営責任者(CEO)から顧客にあてたメッセージを掲載。Cook氏は「米政府は当社に対して、顧客の安全を脅かす前代未聞の手段をとるよう命じてきた。我々はこの命令に反対する」と表明した。

 米メディア(New York TimesPCWorldなど)の報道によると、米連邦捜査局(FBI)は昨年12月に米カリフォルニア州サンバーナディーノの福祉施設で起きた銃乱射事件の捜査のために、犯人の「iPhone 5c」のロック解除に協力するようAppleに要請したがAppleがこれを断ったため、カリフォルニア州中部の連邦裁判所に裁判所命令の発行を求め、治安判事は2月16日にAppleにロック解除を命じる判断を下した。

 FBIでは、専門家らがiPhone 5cのロック解除を試みたがまだ成功していない。パスワード入力に10回失敗すると、セキュリティ機能が働いて端末内のデータが永久に消滅する可能性がある。

 Cook CEOの公開書簡は、裁判所命令を受けた数時間後に掲載された。Cook氏は、「今回米政府は、我々にiPhoneのバックドアを設けるよう要請してきた。FBIは議会を通じて法的措置をとるより、1789年の『All Writs Act(全令状法)』によって権限の拡大を正当化しようとしている。政府の要求は恐怖を感じるものだ。もし政府が全令状法を使って簡単にiPhoneをロック解除できるとすれば、すべての人の端末からデータを入手する力を持つことになる」と、命令拒否の理由を説明。「FBIの意図は善良なものだと信じているが、我々に製品のバックドア設置を強いることは間違っている。その要求はそれこそ、政府が保護するつもりの自由を損なうことにつながると我々は懸念している」と述べた。

 米電子フロンティア財団(EFF)やアメリカ自由人権協会(ACLU)は同日、Appleの対応を支持する声明をそれぞれ(EFFのプレスリリースACLUのプレスリリース)発表。Twitter上でも、Ron Wyden上院議員が「FBIの要請は抑圧的体制につながる危険性がある」とツイートするなど、Appleに賛同するツイートが多く投稿されている。一方で、「プライバシーの保護が重要なことは分かるが、殺人を犯したのだから、ロック解除するべき!」といった反対意見も多く見られ、オンライン上で議論が繰り広げられている(米Wall Street Journalの報道)。