富士電機と日本IBMは2016年2月15日、総務省が全国の地方自治体のセキュリティ対策のために導入を推進している「自治体情報セキュリティクラウド」の構築について協業すると発表した。同日から販売を開始した。2016年度に200億円の受注を目指すとしている。

 「自治体情報セキュリティクラウド」とは、2015年に長野県上田市(関連記事:長野県上田市を襲った標的型攻撃メール、住基ネット強制遮断の憂き目に)などの自治体や関連団体でサイバー攻撃事件が相次いだのを受けて、47都道府県や約1700の市区町村のセキュリティを強化する施策を指す。総務省の検討チームは2015年11月下旬にネットワークの再構成などを含む最終報告をまとめた(関連記事:自治体はサイバー攻撃からマイナンバーを守れるのか)。

 総務省はこの施策を推進するために、少なくとも1400億円程度の予算を見込んでいる。同省は既に、2015年度補正予算で255億円を確保。これに付随する「補正予算債」でさらに255億円を確保する。2016年度予算案には、地方財政対策として自治体に交付できる財源約850億円分を盛り込んでいる。この予算が可決すれば、総額は約1400億円となる(関連記事:政府予算はサイバーセキュリティ分野が急伸)。

 このまとまった予算を巡って、今後「自治体セキュリティ商戦」が盛り上がることが想定される。富士電機と日本IBMはこの商戦に先鞭をつけるために、他陣営に先駆けて協業を発表した。

 2社は地方自治体のうち、47都道府県を主な顧客とする。総務省の計画によれば、47都道府県には市区町村がインターネットに接続するための出入り口を集約し、集中的に監視することになっている。富士電機は、自治体向けクラウドの導入・運用の実績を生かして、行政実務に適した業務システム・端末を提供する。日本IBMは、サイバー攻撃の兆候に関する情報(セキュリティインテリジェンス)や、攻撃の監視・解析業務(SOC=セキュリティ・オペレーション・センター)を提供する。