NTTは2016年2月15日、8K映像サービスを実現する専用LSIによる8K HEVCリアルタイムエンコーダーを開発したと発表した。「H.265/HEVC」(HEVC)対応の専用LSIの「NARA」を4チップ連携動作させて、チップ間で相互データ転送を行うことにより、8K/60p映像対応HEVCリアルタイムエンコーダーを実現した。

 今回の8Kエンコーダーは、画面分割による並列エンコード方式を採用している。7680画素×4320画素の8K映像を4つの画像に分割し、それぞれを4K映像相当の処理能力を持つHEVCエンコーダLSIで並列にエンコードを行う。

 新たに開発したエンコーダーでは、4チップ間で参照画像を相互に転送し、分割境界を跨ぐ動きに対応したエンコード処理を実現した。これにより、分割による符号化効率の低下を生じさせることなく、高い符号化効率を実現しているという。また、分割境界を跨ぐ平滑化フィルタ処理および分割画像間の画質を均一化する符号量制御処理をいずれもチップ間のデータ転送によって実現した。

 従来のH.264では160M~200Mbpsのビットレートが必要だったが、今回は8K映像の伝送を約85Mbpsで可能とした。これまで、4K対応のエンコーダLSIを並列動作させて8K映像のリアルタイムエンコードを実現した例はあったが、チップ間の相互データ転送を伴わないため、符号化効率や画質の面で十分とはいえなかったという。また、高速・広帯域のチップ間転送を実現するために汎用のPCIeバスを採用することで、経済的かつ柔軟な実装を実現したとしている。

 今回のエンコーダーでは、HEVCエンコーダLSI 4チップと周辺回路を搭載した1ボードで実現している。装置サイズとしては、入力映像信号のインタフェースボードなどを含めても19インチ幅ラックで5U(222mm高)程度での実装が可能で、「従来に比べ大幅な小型化・経済化を実現している」という。

 NTTは今回の8Kエンコーダーを用いて、パブリックビューイングやODS(Other Digital Stuff/Other Digital Source、映画以外のコンテンツを映画館で上映すること)などの超高精細8K映像配信サービスや医療用途での実証実験の推進を予定する。

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