米Facebookは無料インターネットサービス「Free Basics」のインドでの提供を中止したと、複数の米メディア(PCWorldMashableなど)が現地時間2016年2月10日に報じた。インド通信当局の新たな規則により、「インドの人々はもうFree Basicsを利用できない」と、Facebook広報担当者が認めたという。

 Free Basicsは、世界のインターネット普及促進を目指してFacebookが中心となって発足した「internet.org」のプロジェクトの1つ。テキストのみ表示する軽量Facebookや、英BBCのニュースサイト、検索エンジン「Bing」といった基本的なインターネットサービスへのアクセスを無料で提供する。

 無料アクセスできるのが特定のコンテンツやサービスに限られるため、インドでは、「壁に囲まれた庭」を作ろうとしているとの懸念が広がったほか、貧しい人々ではなく、もともとFacebookなどのサービスにアクセスできるインターネットユーザーが使っているとの批判の声もあった。

 インド電気通信規制庁(TRAI)は2月8日に、データサービスの差別的価格設定を禁じる規則の制定を発表。同規則では、サービスプロバイダーがコンテンツに応じて異なるデータサービス料を適用すること、差別的データサービス料を提供するための取り決めや契約を結ぶことを禁止している(関連記事:インド通信当局、Facebookの「Free Basics」を禁じる規則を制定)。

 インドでFree Basicsを提供していたパートナー通信事業者Reliance Communicationsは、Free Basicsを有料化する計画で、サービスの再構成にすでにとりかかっているという。

 Facebookの社外取締役を務める投資家のMarc Andreessen氏は、Free Basicsを拒否することは間違った判断だと非難するコメントを自身のTwitterアカウントから投稿。Free Basicsをインドの植民地時代になぞらえ、「反植民地主義はインド国民に数十年にわたる経済的崩壊をもたらしている」と述べた(米PCMagの報道)。

 Andreessen氏のツイートを見たMark Zuckerberg氏は即座に自身のFacebookタイムラインに「たいへん動揺している。Andreessen氏のコメントはFacebookや私の考え方を示すものではない」と投稿。Andreessen氏はその後、「私は植民地主義に100%反対し、インドを含むすべての国での独立と自由を100%支持する。私の発言によって嫌な思いをしたすべての方々に謝罪する」とツイートし、問題の発言を削除した。