インド電気通信規制庁(TRAI)は現地時間2016年2月8日、データサービスの差別的価格設定を禁じる規則を制定したと発表した。これにより、米Facebookの無料インターネットサービス「Free Basics」は同国で提供できなくなる。

 同規則においては、いずれのサービスプロバイダーもコンテンツに応じて異なるデータサービス料を課してはならず、差別的データサービス料を提供するための取り決めや契約を結んではならない。ただし、緊急サービスに対するアクセス料の引き下げは許可される。

 Free Basicsは、世界のインターネット普及促進を目指してFacebookが中心となって発足した「internet.org」のプロジェクトの1つ。テキストのみ表示する軽量Facebookや、英BBCのニュースサイト、検索エンジン「Bing」といった基本的なインターネットサービスへのアクセスを無料で提供する。Facebookは各国の通信事業者と提携し、30カ国以上でFree Basicsを展開している。

 インドでは、パートナーのインド通信事業者Reliance Communicationsを通じてFree Basicsを開始したが、昨年12月に一時サービス停止の措置を受けていることが報じられた(関連記事:Facebookの「Free Basics」がインドで一時中止に、当局の要請で)。同国では、特定のインターネットサービスへの無料アクセスを提供するFree Basicsは、ネット中立性の原則を侵害しているとの批判が上がっており、TRAIが12月より、関係者から意見を聞くなどして調査を進めていた。

 TRAIは、「データサービスの料金について、ネット中立性の原則に鑑み、消費者は差別や妨害のないインターネットアクセスを利用できるようになるべきだ」として、同規則を定めたと説明している。

 TRAIの発表を受け、FacebookのMark Zuckerberg最高経営責任者(CEO)は自身のFacbookタイムラインに声明を投稿。「我々は今回の決定に失望しているが、私自身が伝えたいことは、我々がインドおよび世界中で人々がつながることを妨げているものを取り除くために努力し続けているということだ。我々の使命は、世界をよりオープンでよりつながるものにすること。この使命は続いており、我々のインドでの取り組みも続ける」と述べた。

 米メディアの報道(New York Times)によると、Facebookは、インドのネットユーザーに対してFacebookのニュースフィードで嘆願書への署名を促す広告を表示したり、Zuckerberg氏が英Times紙のインド版に寄稿したりするなど、Free Basicsがインドにもたらすメリットを主張するキャンペーンを展開したが、逆効果だったようだと一部専門家は述べている。

[発表資料(PDF文書)]