富士通は2016年1月28日、シンガポールで富士通アジアカンファレンスを開催した。「Human Centric Innovation in Action」をテーマとして展開してきた2015年度のアジアカンファレンスの締めくくりとなる。後半のビジネスセッションはデジタル・マニュファクチャリング、Fintechなどを含め、全体としてデジタル化の動きを示す内容となった。中でもFintechは注目度が高く、カンファレンス終了後も、講師と話し込む聴講者が目立った。

 冒頭で富士通シンガポールのカントリープレジデントであるウォン・ヘン・チュウ氏が壇上に立ち、「デジタル化は様々な産業に破壊(ディスラプション)をもたらした」としたうえで、今後さらに変革が進む社会を、富士通は顧客企業やパートナー企業とともに形成していくと話した(写真1)。

写真1●富士通シンガポールのウォン・ヘン・チュウ カントリープレジデント
写真1●富士通シンガポールのウォン・ヘン・チュウ カントリープレジデント
写真2●富士通の斎藤淳一Asiaリージョン長・執行役員
写真2●富士通の斎藤淳一Asiaリージョン長・執行役員

 続いて富士通の斎藤淳一Asiaリージョン長・執行役員が登壇。東南アジアにおけるシンガポールの重要性を指摘するとともに、シンガポールには才能あふれる人々が集まっており、イノベーションや新たなアイデアの中心になり得ると話した(写真2)。加えて、シンガポールは富士通の技術開発のハブであり、国家レベルでのスーパーコンピュータ開発プロジェクトを進めていることなどを紹介した。

デジタル革命にはイノベーションが不可欠

写真3●米フロスト&サリバンのアジアパシフィック・シニアバイスプレジデントであるアンドリュー・ミルロイ氏
写真3●米フロスト&サリバンのアジアパシフィック・シニアバイスプレジデントであるアンドリュー・ミルロイ氏

 続くスピーカーは、米国を本拠とする調査・コンサルティング会社、フロスト&サリバンのアジアパシフィック・シニアバイスプレジデントであるアンドリュー・ミルロイ氏で、「シンガポールにおけるITの未来予測(Singapore Predictions – The Future of IT)」と題して講演(写真3)。デジタル変革(デジタルトランスフォーメーション)が進み、新たなビジネスモデルが生み出されていくと話した。

 その一例としてミルロイ氏は、これまで進んできたIT分野でのクラウド活用(Cloudification)と同様に、今後はオペレーション技術分野でのクラウド活用が進んでいくとした。インダストリー4.0はその一部であるという。

写真4●
写真4●
写真4●富士通の松本端午執行役員常務 CTO&CIO

 ミルロイ氏の後は、富士通の松本端午執行役員常務 CTO&CIOによる基調講演である。講演の最初で松本CTO&CIOは、シンガポールはASEANの中核であるとしつつ、GDPの成長率が2〜3%と低い数値にとどまっていることを指摘。今後の成長のためには、人と情報を結びつけたイノベーションが不可欠だと主張した。

 松本CTO&CIOは、人と情報、インフラを結びつけた例として、位置情報クラウド「SPATIOWL」などを紹介(写真4)。加えて、サステナブルな都市づくり、災害対策、つながる工場、デジタルマーケティングなど様々な分野でデジタル化が進展していることを示した。

 さらに、こうしたデジタル化を背景としながら同社が取り組んでいる、顧客とのイノベーションの「共創」についても、事例を披露した。今シーズンの富士通アジアカンファレンスでは毎回紹介してきた、オムロンの主力工場における製造プロセスの改善、スマートアグリカルチャー事業などのほか、スペインで最大の銀行ATM(現金自動預払機)ネットワークを取り上げた。ATMとしては初めて非接触型カードに対応したもので、操作用と操作案内・支援用の2つの画面が取り付けられている。ATMの操作に不慣れな利用者にも使いやすい仕組みを実現したという。