セキュリティソフトウエアベンダーの米VirnetX Holdingが米Appleを相手取って起こしていた特許侵害訴訟について、米テキサス州東部の米連邦地方裁判所は現地時間2016年2月3日、Appleに6億2560万ドルの損害賠償支払いを命じる判決を下した。

 VirnetXの弁護団によると、陪審は、Appleが「VPN On Demand」「iMessage」「FaceTime」などの機能において、VirnetXの特許技術を使用し、意図的に侵害したと判断した。

 両社の係争では、2012年に同地裁がAppleによるVirnetX特許4件の侵害を認め、3億6800万ドルの損害賠償を言い渡した。しかし米連邦巡回区控訴裁判所は2014年9月、この判決を覆し、審理を差し戻した(関連記事:Appleに対する3億6800万ドルの特許侵害賠償命令が差し戻しに)。

 今回の再審では、すでに同地裁がAppleによる侵害があったとみなしていた特許の使用料に加え、Appleが修正後のVPN On DemandやiMessage、およびFaceTimeで引き続き特許を無断使用していたことに対する賠償が科された。

 Apple関連の情報サイト「AppleInsider」によると、VirnetXは5億3200万ドルの支払いを求めていたが、評決の金額がそれより膨れあがったのは、「Appleが意図的に特許侵害を継続した」との判断が影響したためと見られる。

 Appleは、上訴する意向を示しており、「今回の判決にたいへん驚き、失望している。このような訴訟は、特許制度改革の必要性をひたすら強調するものだ」と述べたという。VirnetXの株価は時間外取引で94%高の9.30ドルに上昇した(英Reutersの報道)。

 VirnetXは売り上げのほとんどを特許ライセンスから得ており、これまで米Cisco Systemsや米Microsoftなども特許侵害で提訴した。Microsoftを相手取った訴訟では2010年に2億ドルのライセンス料を獲得(関連記事:Microsoft、VPN特許訴訟でVirnetXと和解、2億ドルでライセンス取得へ)。Microsoft傘下のSkypeに対する訴訟でも2300万ドルの和解金を手に入れた。

 自らは保有特許を利用した製品やサービスを開発・販売せず、特許に抵触する大手企業などから巨額の賠償金やライセンス料の取得を狙う「パテントトロール」による訴訟は依然多く、テキサス州東部に集中する傾向がある(米Ars Technicaの報道)。

[発表資料(VirnetX側弁護団のプレスリリース)]