写真●東京大学の大澤幸生教授
写真●東京大学の大澤幸生教授
(撮影:井上 裕康)
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 東京大学工学部教授でシステム創成学科学科長の大澤幸生氏は2016年1月25日、東京・目黒のウエスティンホテル東京で開催した「イノベーターズ会議」(日経BP社 日経ITイノベーターズ主催)で特別講演に登壇した。題目は「データ活用の本質~ビッグデータブームに踊らされないために」。

 講演の冒頭、大澤氏は自身の経歴とデータ分析に対する考え方の移り変わりについて紹介した。大澤氏は1995年に東京大学工学研究科で、人工知能分野の工学博士号を取得した。その後、大阪大学に移り、データマイニングの研究に取り組んでいた。

 「しかし、データマイニング自体の意義に疑問を持つようになった」(大澤氏、写真)。そのきっかけは阪神淡路大震災だったという。「データマイニングは、大量のデータから頻度の高いパターンを見つけ出し、有意義な情報として抽出する方法」(大澤氏)。しかし地震のような、ごく稀に発生するイベントに対しては、既存のデータマイニングでは効果が無かったという。

 そこで大澤氏は、発生頻度は低くても重要な意味を持つイベントを発見する手法の開発に取り組み始めた。特に、利用者の意思決定に関係のあるイベントを予兆する。「私はこれを『チャンス発見』と呼んでいる。重要なイベントを予兆して、利用者の意思決定につなげられることが本質だ」(大澤氏)。