図●AWS CSV適用リファレンスの概要
図●AWS CSV適用リファレンスの概要
(出所:フィラーシステムズ)
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 国内のSIベンダー5社は2016年1月22日、製薬・医療機器メーカー向けに、情報システム基盤にクラウドサービスのAWS(アマゾンウェブサービス)を利用するためのガイド文書を提供すると発表した()。AWSを含めたシステム要件をどのように整理すればよいのかをまとめた「AWS CSV適用リファレンス」と、AWS上でシステムを提供するSIベンダー選びの要点を整理した「AWS サプライヤーチェックリスト リファレンス」である。

 二つのリファレンス文書では、情報システムの担当者ごとに、クラウド事業者(AWS)の担当範囲、SIベンダーの担当範囲、ユーザー(製薬・医療機器メーカー)の担当範囲を明確化している。このうえで、製薬・医療機器メーカーの情報システムに求められている“バリデーション”の工程、すなわちシステムの信頼性を検証・確認し、その結果を文書化して保証する工程で考慮しなければならないことを解説している。

 NTTデータグローバルソリューションズ、JSOL、東洋ビジネスエンジニアリング、日立システムズ、フィラーシステムズのSIベンダー5社が、リファレンス文書を共同で作成した。SIベンダー各社は、ユーザーに提供するシステム構築サービスや製品サービスなどに、リファレンス文書を利用していく。

 リファレンスを作成した背景には、薬や医療機器は、その品質によって人体の健康や生命を左右する可能性があるという状況がある。このため、薬や医療機器を開発する情報システムには、信頼性を保証するバリデーションが求められる。製薬・医療機器メーカー向けの情報システムをどのようにバリデーションすべきかについては、厚労省が「医薬品・医薬部外品製造販売業等における『コンピュータ化システム適正管理ガイドライン』」としてまとめている。

 製薬・医療機器分野のバリデーション要件や監査事項は複雑である。このため、システムをAWS環境で動作させるためには、AWSの活用方法を含めて整理しておかなければならない。今回5社は、このために役立つ文書を用意した形である。文書の一つ「AWS CSV適用リファレンス」のCSVとは「コンピュータ化システムバリデーション」(Computerized System Validation、CSV)のことで、情報システムの信頼性を検証・確認し、その結果を文書化して保証することを指している。