米IBMのGinni Rometty会長兼CEO(最高経営責任者)は2016年1月6日(米国時間)、米ラスベガスで開催中の「CES 2016」の基調講演に登壇し、ソフトバンクのロボット「Pepper」への「Watson」の搭載など、同社のWatsonの最新の取り組みについて発表した(写真1)。
「IBMの100年以上の歴史の中でも、CESの基調講演に登壇したCEOは私が初めてだ」。Rometty CEOは基調講演の冒頭でそう明かした。CESは最近になってイベントの正式名称がCESになったが、かつては「Consumer Electronics Show(家電ショー)」と呼ばれていた。コンシューマー(消費者)向けのテクノロジーをテーマにしたCESに、BtoB(企業向け)のITベンダーであるIBMが登壇するのはなぜか。Rometty CEOはその理由を「あらゆるビジネスや、あらゆる人々の生活がデジタル化しようとしているからだ」と説明する。
人々の周囲に存在するあらゆるモノがインターネットにつながり、膨大なデータを生成する「IoT(Internet of Things)」の時代が、今まさにやってこようとしている。CESに集うような消費者向けの製品を提供・開発する企業にとっても、モノが生成するデータの活用が不可欠になっている。しかし「データの8割以上が『見えない状態』になっていることが課題だ」とRometty CEOは指摘する。
Watsonはデータの意味を理解するコンピュータ
Rometty CEOが言う「データが見えない状態」というのは、データが数値として存在するだけで、そのデータが持つ「意味」が理解されていない状態を指す。そのような「データが見えない状態」を解決する存在としてIBMが売り込みを図っているのが、「コグニティブ(認知)コンピューティング」を実現する「Watson」だ。「コグニティブコンピューティングとは、データの持つ意味をコンピュータが理解するということ。Watsonを活用することで、見えない状態にあったデータの活用が可能になる」とRometty CEOは説明する。
「2011年にWatsonがクイズ番組の『Jeopardy!』で優勝した際、Watsonができるのは質問応答(Q&A)だけだった。それが今ではWatsonは32の機能を備え、それら機能の全てがクラウドのAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)として誰でも利用可能になった。今では36カ国のプログラマーがWatsonを活用している」とRometty CEOはWatsonの現状を説明した。
IBMはWatsonをクラウドのサービスとして提供するだけでなく、Watsonに理解させる「データ」そのものの提供も始めている。その取り組みの一つが、気象情報サービス会社である米Weather Companyの買収だ。「小売りビジネスの展開や、自動車の安全を実現する上で、気象データは不可欠な存在になっている。企業はデータを保有しなくても、IBMが提供するサービスを利用するだけで、これらのデータにアクセスできるようになった」(Rometty CEO)。