図1●「J:COM電力の概要」
図1●「J:COM電力の概要」
[画像のクリックで拡大表示]
図2●低圧電力小売事業のサービス概要
図2●低圧電力小売事業のサービス概要
[画像のクリックで拡大表示]
図3●高圧一括受電サービスの仕組み
図3●高圧一括受電サービスの仕組み
[画像のクリックで拡大表示]
図4●低圧電力小売事業のスキーム
図4●低圧電力小売事業のスキーム
[画像のクリックで拡大表示]
図5●料金の概要
図5●料金の概要
[画像のクリックで拡大表示]
図6●料金の計算方法
図6●料金の計算方法
[画像のクリックで拡大表示]
図7●料金表(関東の例)
図7●料金表(関東の例)
[画像のクリックで拡大表示]
図8●割引料金の例
図8●割引料金の例
[画像のクリックで拡大表示]
図9●J:COM、傘下の各局、サミットエナジーの役割分担
図9●J:COM、傘下の各局、サミットエナジーの役割分担
[画像のクリックで拡大表示]

 国内最大手MSO(ケーブルテレビの統括運営企業)であるジュピターテレコム(J:COM)は2016年1月6日、2016年4月に提供を開始する低圧電力小売りサービス「J:COM電力 家庭用コース」の先行申し込み受付をスタートすると発表した。同日、会見を開き、サービスの概要を説明した (図1、図2)。

 J:COMでは、2012年に大規模マンション向け高圧一括受電サービスを開始し、これまで全国で約7万4000世帯の契約実績(同社子会社のアイピー・パワーシステムズによる契約も含む)がある。ただし、このサービスは、大型マンションが対象であり、機器交換や全戸同意が必要など利用のハードルが高かった (図3)。

 今回は、加えて低圧電力小売事業も開始することで、全国15都道府県のサービスエリア内の約1955万世帯(J:COMサービス提供可能世帯数)を対象に電力サービスを展開する。サービスエリア全域(J:COM下関を除く)で提供するもので、機器交換の必要もない。手続きも簡単なことから、より多くの世帯が利用可能になると想定する (図4)。

 「J:COM電力 家庭用コース」では、電力料金のうち従量部分について、最大10%割り引く (図5、図6)。料金体系を地域電力会社と同じにして、比較しやすくする。これは、「J:COMが電話サービスに参入したときに好評だった戦略と同じ考え方」(ケーブルTV事業部門 ケーブルTV事業統括本部長の高橋邦昌氏)だという。

 関東地区を例にした料金表は 図7の通り。ケーブル多チャンネル放送、高速インターネット、固定電話を含むJ:COMサービス(長期契約プラン)と組み合わせることで、地域電力会社に比べて電力量料金(従量部分)を3段階式で割り引く。

 例えば関東の一戸建てに居住し月間電気使用量が485kWh、年間電気使用量が5820kWhの家庭(J:COM加入者を対象としたアンケート結果に基づく戸建て全国平均の推定値)が「J:COM電力家庭用コース」に加入した場合、東京電力の現行の電力料金(月額約1万2600円)に比べて、年間で約6800円割安となる (図8)。

 なお、大規模マンション向け高圧一括受電サービス(J:COM電力 マンション一括コース)は電気料金全体に対して最大8%割り引くもの。これに対して、「J:COM電力 家庭用コース」は従量部分のいわゆる「従量料金第3段階」を対象に最大10%割り引くものであり、高圧一括受電サービス対象のマンションの場合は全戸同意可能であれば、J:COM電力 マンション一括コースの方が割引金額は大きくなる。

 J:COMが販売する電力の調達および需給管理は、住友商事グループの国内電力事業会社であるサミットエナジーが行う (図9)。また「J:COM電力 家庭用コース」の開始にあわせて、日本の森林を守る社会環境貢献プログラム「J:COMグリーンプログラム」を2016年4月から実施する。一般社団法人フォレストック協会が運営する「フォレストック認定制度」を用いたもので、「J:COM電力 家庭用コース」利用で1世帯当たり年間約5平方メートルの森林を守ることにつながるという。

 会見で、J:COM 執行役員 ケーブルTV事業部門 副部門長の堀田和志氏は、「中期目標として最低100万世帯の加入を目指す。時期についいては、中期目標とする以上、数年レベルと考えてほしい」「利用者の満足度向上を一番の目標にして事業参入することにした。例えば料金について、当社のメインユーザーであるファミリー層(シングル層より電力を多く使用)向けに設定した」と説明した。

 KDDIとの競合については、「今でも固定回線の関連事業について、同じエリア内で健全な競争をしており、電力に関しても同じ位置づけになると考える。トータルのサービスで互いに切磋琢磨して競争していくことになるだろう」とコメントした。

 なお、今回提示した料金体系について「基本的にはこの料金でサービスインする予定だが、競合他社の出方によっては検討する可能性はある」(堀田和志氏)とした。一方で、「あらゆるメニュー、ケースで最安になるという戦略ではない。当社の利用者に見合った競争という観点から考えていく」として、単純な料金競争は行わない方針を述べた。

 他社との競合の関連では、「かゆいところに手が届くようなフェース・ツー・フェースの顧客サポートサービスを提供していることが当社の強み。今回の電力サービスの関連でも、様々な疑問に回答できる体制を整えていく」(高橋邦昌氏)と、ケーブルテレビならでは顧客サービスで競う考えを示した。また、「電力だけで勝負するわけではなくトータルのサービスで勝負する。他社サービスが出そろった段階で、改めてトータルでどう勝負していくか精査することになろう」(堀田和志氏)とした。

 J:COMグループ以外のケーブルテレビ局に対して電力小売り事業で必要となるソリューション(電力の調達など)を提供する可能性については、「今後各社から要望があれば、win-winの関係が築けることを前提にして、提供する可能性はある」(高橋邦昌氏)と回答した。

[発表資料(PDFファイル)へ]