写真1●台湾富士通の池上一郎社長
写真1●台湾富士通の池上一郎社長

 「台湾富士通は今年で20周年。これからも台湾の方々に喜んでいただける仕事をしていきます」。富士通は2015年12月10日、台湾でFujitsu Asia Conferenceのシリーズ4回めとなるセミナーを開催した。冒頭のコメントは、開会の挨拶に立った台湾富士通・池上一郎社長の言葉だ(写真1)。池上氏の次には、富士通のアジア事業の責任者である斎藤淳一・執行役員Asiaリージョン長がスピーチし、アジアにおける台湾の重要性などを指摘しつつ、200人を超える聴講者に向け、ともに社会づくりを進めていきたいと呼びかけた(写真2)。

写真2●富士通の斎藤淳一・執行役員Asiaリージョン長
写真2●富士通の斎藤淳一・執行役員Asiaリージョン長

 ゲストスピーチで登壇したのは、台湾の行政院副院長(副首相)であるチョウ・チェンセイ(張善政、Chang San-cheng)氏(写真3)。チョウ副院長は「民間企業のプライベートカンファレンスで講演するのは適切ではないと言われるかもしれないが、自分はそうは思わない」としたうえで、スーパーコンピュータなど技術の進歩の重要性を強調。さらに、富士通をはじめ先端技術を持つ企業の力に対する、台湾としての期待を述べた。

写真3●台湾のチョウ・チェンセイ(張善政)行政院副院長(副首相)
写真3●台湾のチョウ・チェンセイ(張善政)行政院副院長(副首相)

 「台湾のITの未来と展望」と題した講演でチョウ副院長は、「現在、台湾ではIoT(Internet of Things)やセキュリティ、ヘルスケアなどに力を入れている。これらは主にコンシューマ向け。台湾企業のビジネスはBtoBが主流だが、それでも最終利用者であるコンシューマを意識する必要がある」と指摘した。IoTを核とする「生産力4.0計画」を進め、新たな市場を切り開いていく方向性を示した。生産力4.0は、いわば台湾におけるインダストリー4.0の取り組みである。

重要なのは“共創”、日台双方が強調

 続けて、阪井洋之・執行役員常務グローバルマーケティング部門長、台湾生産力4.0計画を推進する経済部工業局のシェン・イウセイ(沈維正、Shen Wei-cheng)金屬機電組組長が講演した。阪井氏は、IoT、ビッグデータを活用したデジタル変革を支える「Human Centric Innovation」の考え方を説明しつつ、同社の事業やソリューションを紹介した(写真4)。具体的には、フィリピンの電動三輪タクシー向け情報提供などで採用採用されている位置情報クラウド「SPATIOWL」や、IoTによる工場の製造プロセス改善、スマートアグリカルチャー事業の「Akisai」、ニュートリノを観測するスーパーカミオカンデ向けのシステムなどである。

写真4●阪井洋之・執行役員常務グローバルマーケティング部門長
写真4●阪井洋之・執行役員常務グローバルマーケティング部門長

 さらに、これらの多くの事例は、顧客などとともに課題解決に臨む「共創」によるものであるとし、富士通が、各分野において、顧客のパートナーとして技術や人材を提供していることを強調した。例の一つはオムロンと取り組んだ、工場における生産性アップや工程改善の推進。ほかに、レオパレス21の賃貸住宅を対象に実現した、太陽光発電向けの屋根貸しモデルの実現、3Dプリンターなどの定額使い放題サービスを提供する米テックショップとの日本における合弁事業の立ち上げなども、共創の事例として紹介。台湾でも同様の共創を推進していきたいと話した。