IFRS(国際会計基準)の設定主体であるIASB(国際会計基準審議会)のハンス・フーガーホースト議長が2015年12月21日、東京でIFRSの状況に関して説明。日本でのIFRS任意適用の拡大を評価する一方、日本版IFRSともいわれるJMIS(修正国際基準)については「意見発信の手段と理解している」との見方を示した。

「4年前にこの状況は想像できなかった」

 IFRSを任意適用した日本企業は、11月17日時点で97社(適用予定を含む。金融庁調べ)。フーガーホースト議長は「2011年に初来日した時点で、任意適用したのは4社。IFRSへの関心は低かった」とし、「幸いなことに、現在では日本でもIFRSへの関心が高まっている。任意適用の状態でIFRSの採用を決定したというのは、企業が『IFRSを使う方がメリットがある』と判断した表れだ」と語った。

 「IFRSを採用した理由は二つあると考えられる」と、フーガーホースト議長は続ける。「一つは、海外子会社の管理が容易になる。もう一つは世界中の投資家とのコミュニケーションが容易になることだ」。

 「100社近くが任意適用したといっても、3000社を超える上場企業の中ではまだ少ない。日本はIFRSの強制適用(フルアドプション)を考えるべきか」と尋ねたところ、フーガーホースト議長は「100社の規模は大きく、時価総額で全上場企業の4分の1近くを占める(本誌注:金融庁によれば約20%)。他に200社近い企業がIFRSの採用を真剣に考えているとの調査結果もある(関連記事:上場企業194社がIFRS適用を検討中、東証が開示内容を分析)。4年前にこの状況は想像できなかった」とした。

 その上で、フーガーホースト議長は「ここから先は日本の当局(金融庁)の考え方次第だ」と語る。「『国際的に事業を展開していない中堅中小の企業には日本基準を適用する』との方針を採るのは個人的に理解できる。一方、会計基準の比較可能性を重視して、『全ての企業を対象に、会計基準をIFRSに一本化する』との方針を採ることも理解できる。会計基準を自国でどうするかは各国の当局が決めるべきことで、我々はその決定を尊重する」。