日立製作所は2015年12月17日、スマートフォンにキャッシュカード機能を搭載する「日立モバイル型キャッシュカードサービス」を、国内金融機関向けに提供開始したと発表した。同社によるFinTech関連サービスの第1弾という位置づけ。富士通、NTTデータ、日本IBMといった金融機関向けに強いITベンダーがFinTech領域で立て続けに手を打つなか、日立も同分野に本格参入した格好だ。

 金融機関の顧客はスマホを店頭やATM(現金自動預け払い機)に設置したNFC端末にかざすだけで、各種取引が可能になる。顧客の利便性向上を狙う金融機関向けに売り込む。

 モバイル型キャッシュカードの発行イメージは次の通りだ。まず金融機関が開発する専用アプリ上で、ユーザーは発行申請とスマホなどで撮影した本人確認データの送付する。金融機関側で本人確認が取れれば、モバイル型キャッシュカードが専用アプリ上で発行される。既存のキャッシュカードを移行することも可能だ。

 モバイル型キャッシュカードを発行する際に、口座番号などの情報をスマホのSIM領域に書き込み、NFC通信で金融機関側に設置したNFC端末とやり取りできるようにする。モバイル型キャッシュカードを格納したスマホを持つユーザーが口座の持ち主本人だと認証できるため、本人確認のための押印作業などが無くせるという。

 スマホアプリ上で、事前に取り引きしたい内容などを登録しておくことで、営業店やATMでスマホをかざすだけで、振り込みや引き出しといった作業が可能になると日立はみる。さらにスマホのSIMにキャッシュカード機能を搭載しているため、インターネットバンキングの登録なしに、ネット経由で銀行取引をできるようにすることも可能と見込む。

 日立は社内横断でFinTechの専門部署を設置済みで、コアメンバーとして既に50~60人の体制にしているという。「インタフェース」、「ビッグデータ」、「金融インフラ」、「セキュリティ」の4分野をFinTechでの重点領域としており、今回のサービスは「(ユーザー向け)インタフェース」の分野の位置付けだ。日立 情報・通信システム社の佐藤信彦ソリューション企画部部長は、「できるだけ早く商用導入を実現したい」と意気込む。