中国Alibaba Group(阿里巴巴)は現地時間2015年12月11日、香港の英字新聞「South China Morning Post(SCMP)」を買収することで、発行元のSCMP Group(南華早報集団)と最終合意に達したと発表した。Alibabaはメディア業界での地歩拡大を図る。買収額については明らかにしていない。

 AlibabaによるSCMP紙買収は先月、複数の海外メディアが報じていた(関連記事:Alibaba、香港の英字新聞SCMPの買収に向けて交渉か)。SCMP紙は香港のエリート層に支持され、かつて最も利益性の高い日刊紙とされていた。ただ読者のオンライン移行に伴い、発行部数が落ち込んでいる。1993年に米News Corpの会長であるRupert Murdoch氏が持ち株のほとんどをマレーシア人実業家のRobert Kuok氏に売却して以来、所有者は変わっていない。

 AlibabaはSCMP紙のほか、雑誌やアウトドアメディア、イベントや教育関連事業、デジタルメディア事業なども獲得する。SCMP紙の日曜版「Sunday Morning Post」とデジタル版「SCMP.com」および関連のモバイルアプリケーション、中国語サイト「Nanzao.com(南早中文)」、香港ガイドサイト「Nanzaozhinan.com(南早香港指南)」、さらに「Esquire」や「Elle」といった有名誌の香港版などが含まれる。

 AlibabaのJoe Tsai(蔡崇信)副会長は、「デジタル配信と手軽なコンテンツアクセスを通じて、SCMP紙の読者を世界中に広げることを目指す」と述べている。

 またTsai副会長はSCMP読者への公開書簡で、「一部では、AlibabaがSCMPのオーナーになることで、編集の独立性が崩れるのではないかと心配する向きもあるが、それは偏った見解だ」と述べ、「ニュース報道において、SCMPは客観的で正確かつ公正であり、編集の判断はAlibabaの取締役会ではなく編集室主導で行われる」と強調した。

 SCMP紙は中国本土では報道できない中国政府要人のスキャンダルや人権問題などを取り上げ、1989年の天安門事件や2014年の香港民主化デモなどを報じてきた。Alibabaの同紙買収で、政治的な記事について新聞の自己検閲傾向が強まると懸念するSCMP元編集者の意見を、米New York Timesは伝えている。

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