写真●カドカワの川上社長(左)と坪田塾の坪田氏(右)
写真●カドカワの川上社長(左)と坪田塾の坪田氏(右)
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 カドカワは2015年12月10日、東京大学への進学希望者を対象にした全寮制の塾「N塾」を2016年4月に開設すると発表した。「ビリギャル」の通称で知られる書籍の著者で、個別指導の「坪田塾」を運営する坪田信貴氏が塾長に就任。同塾の講師陣が指導する。N塾はカドカワが2016年4月に開校するインターネット高校「N高等学校」の提携組織という位置付け。塾生はN高にも入学する。カドカワはN高卒業生から東大生を輩出することで同高への世間の評価を高め、教育事業の拡大につなげる。

 N塾は東大進学に特化した個別指導を売りにする学習塾として発足する。施設には名古屋市にある坪田塾の校舎を利用。塾生は栄養管理士による朝夕の食事付きの寮で生活しながら勉強する。定員は30人で男子のみ。N塾の受講費と寮費は合計で月額6万円(年額72万円)。N高の学費は別途必要。

 塾生はN高の勉強もこなす。N高はネットを活用した通信制の高校で、授業やレポートの提出にはニコニコ生放送の仕組みを活用する。卒業すると高校卒業の資格を得られる(関連記事)。

 「N高の価値を世の中に認めてもらうための取り組みだ」。カドカワの川上量生社長は、N塾を設立する狙いをこう述べた(写真左)。川上社長によればN高の反響は大きく、入学を希望する子供は多いが、親世代は不安を抱えているケースが多いという。「子供を持つ親の立場からすると、本当にN高を信用していいのか不安かもしれない。ここは乗り越えなければいけないハードルだ。東大生を出すことが、保護者も含めた世の中のN高に対する見方を変えるきっかけになると考えた」(同)。

 「『世間でひきこもりと言われている子供たちは、家庭や社会の負債と思われているかもしれないが、本当は資産である』。この川上氏の言葉に共感した」。坪田氏は、N塾に参加する理由をこう説明した(写真右)。坪田氏は「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」の著者。N塾でも、坪田塾の知見を生かした個別指導を実施するという。

 カドカワは同日、初心者向けのプログラミング習得コース「バンタン プログラマーズ・ハイレベル・ハイスクール」を2016年4月に開設すると発表した。専門学校を運営するバンタンと協業し、1年で即戦力のプログラマになれる技能を身に付けられるようにする。受講生はN塾と同様に、N高に入学する必要がある。

 講師は現役のプログラマやITエンジニアが中心で、カドカワが手配する。受講生はクックパッドやドワンゴ、はてな、LINEといったネット企業にインターンシップをする機会を得られる。費用は150万円とPC購入費。