2015年12月8日に日経BPイノベーションICT研究所が主催した「金融ITイノベーションフォーラム2015」では、金融機関におけるマイナンバーの取り扱いと制度の活用について二つの特別講演が行われた。

 特定個人情報保護委員会事務局 総務課 企画官の松本秀一氏は「金融機関における特定個人情報の取扱に関する留意事項」、内閣官房 社会保障改革担当室審議官 IT総合戦略室長代理(副政府CIO)の向井治紀氏は「金融機関でのマイナンバー制度活用の展望について」というテーマで講演した。以下、講演の内容をQ&A方式で再構成した。

(特定個人情報保護委員会事務局 松本氏の講演)

金融機関におけるマイナンバー(個人番号)の取り扱いについて、どの資料を参考にすればいいのか。

写真1●特定個人情報保護委員会事務局 総務課 企画官の松本秀一氏
写真1●特定個人情報保護委員会事務局 総務課 企画官の松本秀一氏
[画像のクリックで拡大表示]

 まずは、特定個人情報保護委員会がWebサイト上で公開している「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」をご覧いただきたい。番号法は分かりにくい法律なので、ガイドラインは「分かりやすい解説」をモットーに作った。ガイドラインは大きく総論と各論に分かれるが、総論は企業の経営者にも是非読んでほしい。

 さらに金融機関向けには、ガイドラインの別冊として「金融業務における特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」を公開している。これは金融機関向けの「各論」に相当するものだ。

どのような場合に利用者からマイナンバーを取得できるのか。

 まず原則としては、税務署への支払調書の提出など、マイナンバーに関係する事務手続きが発生する際に、利用者から提供を受けることができる。ただ、利用者との契約に伴って「マイナンバー関係事務の発生が予測できる」場合は、契約の際に提供を受けることができる。

 金融分野では、特定口座や非課税口座(NISA口座)など、マイナンバー付きの取引報告書の提出が義務付けられている口座がある。この場合、利用者が口座開設届出書を提出した時点で、マイナンバー関係事務の発生が予測できることから、マイナンバーの提供を受けることができる。取引報告書は毎年の提出が求められることから、その間は継続的に保管できる。

 保険分野では、保険金の支払いに関する支払調書は、保険契約を結ぶ時点で事務の発生が予測できることから、契約の段階でマイナンバーの提供を受けられる。

 ただし、契約手続きに伴う本人確認として個人番号カードの提示を受けることがあると思われるが、「本人確認の証」として裏面のマイナンバーを書き写すことはできない。本人確認は、マイナンバー関係事務に含まれていないためだ。これまで運転免許証の番号を書き写すことがあったと思うが、マイナンバーでは認められない。

利用者からマイナンバーの提供を拒まれた場合はどうするか。

 まず、番号の提供は法律上の義務である事を説明して、利用者に改めて提供を依頼する。それでも提供してもらえない場合は、「依頼したが、提供してもらえなかった」など経緯の記録と一緒に、税務署に書類を提出する。税務署は、マイナンバーが書かれていないからといって、書類を受理しないということはない。