画面●「ハコベル」のWebサイト
画面●「ハコベル」のWebサイト
出所:ラクスル提供
[画像のクリックで拡大表示]
写真●「これまでは難しかった細かい需要と供給のマッチングが、ネットなら可能になる」と松本社長
写真●「これまでは難しかった細かい需要と供給のマッチングが、ネットなら可能になる」と松本社長
出所:ラクスル提供
[画像のクリックで拡大表示]

 ラクスルは2015年12月3日、トラック運送業者の空き時間を使った荷物配達サービスを始めた。利用者がPCやスマートフォンを使って荷物の種類や配送区間などの条件を入力。運送業者は保有するトラックの空き時間を利用して、配送を受託する。利用者はEコマースで買い物をする感覚で、必要に応じて配送を依頼可能。運送業者は保有するトラックの稼働率を高められる。ラクスルはこれまで中小印刷会社の空き時間を使った低価格な印刷サービスを手掛けてきた。遊休資産を需要と結びつけるシェアリングエコノミーと呼ぶサービスを充実させ、中小企業の経営を支援する。

 新サービスの名称は「ハコベル-hacobell-」(画面)。2015年8月から11月にかけて限られた顧客向けに試験的に提供し、このほど正式にサービスを始めた。

 サービスの利用手順は、利用者の配送予約、運送業者と利用者の間での予約確定、配送、決済と利用者による評価、といったものだ。利用者はスマートフォンなどで荷物の情報を入力。見積額を確認してから、配送を予約する。運送業者のもとには、運送業者用のスマートフォンアプリへ予約情報が送られる。運送業者は気に入った案件を選び、利用者と電話で簡単に内容を確認して受注する。

 配送と決済が完了すると、利用者は運送業者のサービス品質を、星の数などで評価し同サービスのWebサイトに書き込める。利用者の評価によって、配送の品質を担保するのが狙いだ。評価が一定水準を下回った運送業者は登録を抹消する。現行の法制化でグレーなものもあるが、「顧客と運送業者をインターネットで直接結び、ドライバーが空いている時間を使って好きなときに仕事ができるようにする」。ラクスルの松本恭攝社長は、新サービスの狙いをこう話す(写真)。背景には日本のトラック物流市場のピラミッド構造に対する問題意識があるという。

 「日本のトラック物流市場は14兆円と非常に大きいが、上位10社で50%を占める。一方でトラック運送業者は約6万社で、車両が10台以下の零細業者が3万社ある。日本のトラック物流は、市場の半分を占める大手10社を頂点に、6万社が連なる多重下請け構造だ」(同)。中小・零細の運送業者にはピラミッドの上位企業から順番に仕事が流れていき、下位の事業者は割の合わない仕事でも断れないことが多いという。

 シェアリングエコノミーのサービスの中には、現行の法制化でグレーなものもある。ラクスルは「国土交通省と密に連携して、サービスを設計した」(松本社長)。

 サービス開始当初の対象地域は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、福岡県。地域は順次拡大する。