日本マイクロソフトは2015年11月18日、同12日に提供が開始されたWindows 10の大規模アップデート(November Update)に関する説明会を開催した。この大規模アップデートには、パーソナルアシスタント「コルタナ(Cortana)」日本語版の正式リリース、新しい日本語フォント(游明朝、游ゴシック、Yu Gothic UI)の表示改善、日本語入力ソフト(IME)の「クラウド候補」機能の強化など、日本の開発チームが携わった日本ならではのアップデートも含まれているという(図1~図4)。
日本のユーザーにとって最も大きなアップデートといえば、コルタナの正式提供だろう。マイクロソフトはコルタナを「パーソナルアシスタント」と呼ぶ。そのデバイスを使う「個人」に合わせて、必要な情報を提示したり、検索を支援したりしてくれる機能だ(図5)。音声認識にも対応し、自然な会話文での問いかけに音声や文字、画像で答えてくれる。例えば「夕方、傘いる?」と質問をすると、位置情報などからユーザーの居場所を判断して、その地域の天気予報を提示してくれる。カレンダーに予定が登録されていれば、次の予定を教えてくれる。
米マイクロソフトでコルタナ担当グループプログラムマネージャーを務めるマーカス・アッシュ氏は、コルタナは「汎用的なものではなく、パーソナルなアシスタントである」と説明する。ユーザーの個々のニーズに合わせて、必要な情報を提供するものだからだ。そのためにも、「日本では日本の人のように理解してもらわないといけない。そこでコルタナは、文化に合わせて性格が異なる」のだという。
例えば、日本人は「礼儀正しさ」を重んじるため、日本語版のコルタナは言葉遣いが丁寧で、会釈をするような動きをする。天気予報の表示も、日本独自の「晴れのち雨」といった表示や、雪だるまを使った降雪の表現を採用。地震の多い日本ならではの情報として、直近に起こった地震の情報も表示できるようにした。
地域によるコルタナの違いは、問いかけに対する返答の内容に最も顕著に表れる。例えば、「歌を歌って」と投げかけると、「仰げば尊し 我が師の恩」などと日本の歌を歌い出す。「夢を見る?」と尋ねると、「食べきれないほどのみたらし団子に囲まれる夢をみます。」と答える。こうした返答にはいくつかのパターンが用意されていて、同じ問いかけに対して違う答えが返ってくることもある(図6)。
ちなみに「冗談言って」とお願いすると、「電話に出んわ。」といったダジャレで返すほか、「面白い話ですか・・・冴子先生に聞いてみます。」と答えることもある(図7)。「冴子先生」といえば、Office 97~2003に搭載されていたヘルプ機能「Officeアシスタント」のキャラクターの一つ。日本独自のキャラクターとして、少なからずファンがいた名物キャラだ。そんな日本の事情を考慮した、日本の開発陣の遊び心も垣間見られる。
コルタナの声については、声優の声を基にした表現豊かなものと、音声合成による単調なものがある。現状では、感情表現が必要とされるものを優先的に声優の声に置き換えているという。音声認識についてもまだ精度が高いとはいえないが、随時アップデートを繰り返し、改善していく方針だ。
マイクロソフトはWindows 10において「Windows As A Services」という考え方を採用している。これは、インターネット上の各種サービスが随時アップデートして改善されていくように、クライアントOSも早いサイクルでアップデートを実施し、進化させていくというコンセプトだ。「コルタナは、その象徴的な例の一つとして、今後も進化し続ける。利用状況を示す統計データの分析や機械学習、ユーザーからのフィードバックなどを通じて、一緒にコルタナを育てていきたい」(同社広報)。