写真●米IBMシニア・バイス・プレジデントのマイク・ローディン氏(左)と日本IBM社長のポール与那嶺氏(右)
写真●米IBMシニア・バイス・プレジデントのマイク・ローディン氏(左)と日本IBM社長のポール与那嶺氏(右)
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 日本IBMは2015年11月18日、「コグニティブ・ビジネスに関するラウンドテーブル」を開催。質問応答システム「Watson」の事業を統括する米IBMシニア・バイス・プレジデント(SVP)のマイク・ローディン氏や日本IBM社長のポール与那嶺氏をはじめとする同社幹部が、WatsonやWatson関連事業について説明した(写真)。

 与那嶺氏は「顧客が利用するシステムの安定稼働を実現するとともに、顧客に対してCAMSS(クラウド、アナリティクス、モバイル、ソーシャル、セキュリティ)と呼ぶ最前線のテクノロジーを提供する。これが今までの戦略だったが、そこで止まってはいけないと考えている」と前置きした上で、以下のように続けた。

 「欧米ではデジタルによる破壊(デジタルディストラクション)を市場にもたらす新興企業が注目を集めている。こうしたデジタルの利点を我々の顧客に広めていくことが大切だ。企業が持つ大量の構造化・非構造化データを瞬時に理解し、洞察した結果を仮説として推薦・推論する。学習を続けることで、さらに深く考え、賢くなっていく。このような形で顧客がデジタルの恩恵を受けられるWatsonによるコグニティブビジネスを、重要なテーマとして打ち出していく」。

 ローディン氏はWatsonについて、「世界30カ国において、17業種・業態でプロジェクトが進んでいる。AI(人工知能)、機械学習、ニューラルネットワークといった技術要素がWatsonを支えている。Watsonはコグニティブコンピューティングのプラットフォームだが、IBMはそれ以上のもの、すなわちビジネスを変革する存在だと捉えている。日本を含む世界で、そのアイデアを具現化するプロジェクトを進めている」と説明した。

 米グーグルがディープラーニング(深層学習)用ソフトウエアライブラリをOSS(オープンソースソフトウエア)として提供した(関連記事)ことに関連して競合について聞かれると、ローディン氏は「AI分野には多くのライブラリが以前から存在する。機械学習のOSSライブラリも主要なものが2、3あり、その一つがグーグルのものだ。我々はディープラーニングや自然言語処理などに関する機械学習のライブラリを複数組み合わているほか、他の様々な技術を利用している。競合を見ると、3年前のWatsonに並ぶものも存在していない。多くは研究開発の段階だが、我々は実際に適用して顧客と共に学んでいる状態だ」と答えた。

 日本IBMで執行役員研究開発担当を務める久世和資氏は、Watsonを実現するには、(1)大規模データの学習、(2)目的を持った推論、(3)人間との自然なコミュニケーション、という三つの技術分野が必要であると説明。「IBMは三つそれぞれで最高水準の技術を備えており、かつソリューションビジネスに使える段階にある」(久世氏)。

 久世氏によると、現在Watsonのコグニティブコンピューティングを実現している要素技術は、ディープラーニングを含めて30以上ある。「2016年には50に増やす予定だ。この点でも他社の追従を許さない」と久世氏は強調する。

■変更履歴
一部表現を変更しました。[2015/11/19 16:00]