写真1●第1回Jリーグトラッキングデータコンテストの様子
写真1●第1回Jリーグトラッキングデータコンテストの様子
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写真2●最優秀賞を獲得した米村俊亮氏によるランニングアプリ「サポラン」の機能説明
写真2●最優秀賞を獲得した米村俊亮氏によるランニングアプリ「サポラン」の機能説明
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写真3●特別ゲスト審査員として参加した日本サッカー協会の北沢豪理事(中央)
写真3●特別ゲスト審査員として参加した日本サッカー協会の北沢豪理事(中央)
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 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は2015年11月14日、試合データを活用したスマートフォン(スマホ)アプリやWebサイトなどのアイデアを競う「第1回Jリーグトラッキングデータコンテスト」を開催した。当日は、応募総数71作品の中から選抜された5作品の提案者がプレゼンテーションを実施。好きな選手の試合中の走行距離を目標にランニングするというサポーター向けアプリ「サポラン」のアイデアを披露した米村俊亮氏が最優秀賞を獲得した(写真1)。

 Jリーグは2015年のファーストステージから、1部リーグJ1の全公式試合でトラッキングデータの取得を実施している。具体的には、観客席に6台のカメラを設置してフィールドの全域を撮影。全選手と審判、ボールの軌跡を0.04秒単位で記録する。分析を担うデータスタジアムによると「誤差はセンチ単位」という精度の高さを特徴としており、速度・時間帯別の走行時間やフィールド内において滞在時間の長いエリアを示すヒートマップなどを選手ごとに集計している。

 収集したトラッキングデータはこれまでのところ、紙のリポートとして各チームに提供しているほか、一部の集計結果はファンサービスの一環としてウェブサイトで公開している。こうしたデータのさらなる活用法を広く募り、データ活用サービスの拡充とファン層の拡大を図る狙いだ。応募者にはトラッキングデータのほか、試合中のパスやシュートなどの履歴、各試合の天候や観客動員数、各選手の生年月日や身長などのプロフィールといったデータが提供されている。

 最優秀賞を獲得したサポランは、習慣づけることが難しいランニングを、好みの選手との一体感をテコに続けられるよう考えられたスマホアプリのアイデア。好みの選手を登録すると、その選手が直近の試合で走った距離が読み込まれ「目標」としてセットされる。その目標を、次の試合が行われるまでの1週間で走破することを目指す。選手とのつながりを深める仕組みとして、(1)目標を達成すると選手にメッセージが送れる、(2)好みのチームや選手の応援歌(チャント)をランニング時のBGMにできる、(3)同じ選手を応援するサポーター同士でメッセージを送れる――といった機能を提案している(写真2)。

 コンテストではこのほか、審査員特別賞を2チームに授与。1つは日本代表の選抜経験のある選手から好みの人を選ぶと、体格やプレースタイルが似たJリーグの選手を「未来の日本代表候補」として紹介してくれるアプリ「J-League Next Hero Seeker」を提案した昭和女子大学の「FC.CLA」チーム。もう1つは、各チームの走力に関する緻密な分析結果をプレゼンテーションで紹介した完倉信宏氏が選ばれた。

 コンテストには元Jリーグ選手で日本サッカー協会の北沢豪理事が特別ゲスト審査員として参加し、トークショーを展開。Jリーグの公式戦におけるウエアラブル端末の活用について「試合中の選手のデータで疲労度などが分かるようになればハーフタイムに作戦を変えるなどデータを戦術に生かせるし、(データを観客に提供することで)観客へのサービス充実にもつながる。その両方が大事だ」とコメントした。公式戦では現在、フィールド内にパソコンやタブレット(多機能携帯端末)、ウエアラブル端末などを持ち込むことが認められていないが、そうした機器の将来的な活用について期待感を示した(写真3)。