アカウンティング・サース・ジャパン(ASJ)は2015年11月18日、ビッグデータ解析を手掛ける企業である「かっこ」との業務提携を発表した。ASJの税理士向けクラウドサービス「A-SaaS」を通して蓄積した約10万社の中小企業の財務データを分析。2016年春にも協業の第1弾として、経営判断を支援する統計情報などの提供サービスを始める。2016年度中にはノンバンクなどと組み、融資業務などに役立てることも視野に入れる。

 A-SaaSは、約2000件超の税理士事務所が使うクラウド型の税務・会計システムだ。A-SaaSを契約する税理士の顧問先企業も、会計・給与システムを使える仕組みになっている。利用社数は約10万、給与システムへの登録社員は30万人に上る。

 約30人のデータサイエンティストを抱えるかっこは、A-SaaSを介して蓄積したビッグデータを分析し、業種・業態ごとのキャッシュフローの動向などを導出。中小企業の経営者が、自社の状況と比較できる形で統計データを提供するサービスの開発を進めている。A-SaaSのオプションとして提供する予定だ。料金体系などは未定だが、サービスを利用する中小企業に直接課金することになりそうだ。ASJはA-SaaSを使う企業の半分以上に販売することを目標とする。

 ASJが狙うのはそれだけではない。融資分野のFinTechサービスにも乗り出したい構えだ。同社の佐野徹朗代表取締役社長CEO(最高経営責任者)は、「中小企業向けの無担保融資は既存金融機関が苦手とする領域」と指摘する。正確な財務状況などを把握しづらいからだ。

 A-SaaSには、税理士を通した財務データが大量に蓄積されている。これを分析することで、融資を希望する企業の成長予測や倒産確率などを導き出す。健全性を正確に判断できるようになり、与信業務に生かせるという。

 既にかっこと共同で検証を始めており、分析結果を税理士に確認してもらうなどして信頼性を高める取り組みを進めている。今後、ノンバンクなどと協業し、新しい融資サービスを実現させたい考えだ。