富士通と東北電力は2015年11月12日、1本の光ファイバーで複数箇所の温度をリアルタイムに測定するシステムを共同開発し、東北電力秋田火力発電所において実証実験を実施したと発表した。個々の測定ポイントごとにセンサーを設置する既存の方式と比べて、精緻でリアルタイムな検知が可能なことを実証したという。

 東北電力による実用計画は、現時点ではない。富士通では2016年度をめどに本システムを商品化し、発電所だけでなく化学プラントなど様々な設備への導入を目指す。

図●東北電力秋田火力発電所の実証実験で光ファイバーを設置した場所(出典:富士通)
図●東北電力秋田火力発電所の実証実験で光ファイバーを設置した場所(出典:富士通)
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 実証実験では、(a)燃料配管(燃料となる重油を搬送する配管)、(b)蒸気配管(燃料配管に巻きつけることでヒーターの役割を担う配管。高温の水蒸気を送る)、(c)ボイラー煙道(ボイラーで燃焼した排気ガスをボイラー外に排出するためのダクト)の三箇所に光ファイバーを配置し()、これらの温度変化を継続的に測定した。こうして温度変化から設備異常を検知する実証を行った。実験期間は、2014年6月から2015年3月まで。

 実験の成果として、蒸気配管内の水蒸気の異常な液化や滞留の発生を検知できたという。蒸気配管と燃料配管の温度上昇・低下タイミングの比較から、それぞれの配管が正常な状態かどうかを把握することにも成功した。高温・高振動環境下にあるボイラー煙道においても60日間連続での温度監視を実現し、設備の異常検知が可能であることを実証した。

 1本の光ファイバーで複数箇所の温度をリアルタイムに測定する“光ファイバー超多点温度センシング技術”は、富士通研究所が2008年4月に発表している。光ファイバーに赤外線レーザーパルスを入射した際に発せられる微弱なラマン散乱光の強度変化から光ファイバー自体の温度を測る仕組みをベースにしている。位置分解能を向上させており、データセンターの正確な温度測定(位置分解能1メートル以下)を実現しているという。

 従来の温度測定方法は、温度センサーを測定ポイントごとに設置するというものだった。この方法では、複数のセンサーのほか、センサーごとに電源や通信ケーブルを配線する必要がある。