写真●NECの庄司信一執行役員常務
写真●NECの庄司信一執行役員常務
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 NECは2015年11月9日に記者会見を開き、IoT(Internet of Things)戦略について説明した。IoTシステムを5層に定義し、各階層に応じたプラットフォーム製品を投入していく。2017年3月までに製品開発技術者を現在の300人から1000人に増強するなど、体制強化も発表した。同社は2020年にもIoT関連事業を3000億円規模にすることを目指している。

 「当社ではIoTシステムを5層に定義している。明確なビジョンを持って戦略を進められる企業は世界的にも少ないはずだ」。NECの庄司信一執行役員常務は力を込める(写真)。同社が定義する5層とは、「クラウドコンピューティング」、「広域ネットワーク」、「エッジコンピューティング」、「近距離ネットワーク」、「デバイスコンピューティング」だ()。

図●NECが定義するIoTシステムの5層モデル
図●NECが定義するIoTシステムの5層モデル
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 同社が特に重視するのが、「エッジコンピューティング」と呼ぶ層である。「センサーなどのデバイスとセンター側のクラウドが直接データをやり取りしていては、大規模な負荷が掛かり、問題が生じる可能性がある」と、同社の福田公彦執行役員は指摘する。そこで必要なのが、両者の中間に位置してデータの一次処理などを担う「エッジコンピューティング」層というわけだ。体制強化についても、同領域を中心に実施する。

 想定するのは、例えば画像データを収集・解析し、制御するような場合だ。防犯カメラなどが撮影した画像データを全てセンターのクラウドにアップロードしていては時間がかかる。そこで画像認識技術を使って特徴点だけを抽出し、データ量の圧縮などを行う。

 NECは同日付けで、IoT製品強化の第1弾として、「クラウドコンピューティング」層向けのハードウエア新製品の販売も開始した。

 一つは、データ分析用途で利用する高集積サーバー「DX2000」。1ラック当たり572台のサーバーを収容可能で、Hadoopをサポートしている。2016年2月に出荷を始める。

 もう一つは、サーバー内の内部バス「PCI Express」をイーサネットで延長できる「ExpEther 40Gセット」だ。サーバーの拡張スロットに挿入するExpEtherボードと拡張ユニットをセットにしたもので、遠隔にある複数サーバーのコンピュータリソースを接続できる。2016年3月の出荷開始を予定する。

 さらに、「デバイスコンピューティング」層向けのクラウドサービスとして、「Collaboration Assistant」を2016年度中に発売する。保守作業などで利用する周辺機器について、クラウドを介して遠隔地から操作したり、専用アプリケーションを利用したりできる。複数現場の作業状況や収集データを遠隔地にいる熟練の技術者が確認、指示を出すといった効率化が可能だ。