日経BPイノベーションICT研究所と日経コンピュータ主催の「日経BPアジアICTカンファレンス2015 in ジャカルタ」が2015年10月27日に開催された。同カンファレンスは、ASEAN(東南アジア諸国連合)に進出している日系企業を対象に、現地の最新動向やICTのソリューションを紹介するもので、ジャカルタでの開催は2014年11月に続き2回目。今回のテーマは「AEC(ASEAN経済共同体)発足で経済が活性化、インドネシアで勝つためのICTソリューション活用とは」である。

写真1●松井グローカルの松井和久代表
写真1●松井グローカルの松井和久代表
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 冒頭の基調講演に登壇したのは、松井グローカル代表の松井和久氏(写真1)。「ジョコウィ政権の経済政策と日本企業への影響」と題して講演した。同氏は、インドネシア地域研究者としてジェトロ・アジア経済研究所で20年以上働いた後、日本とインドネシアを行き来しながら、ビジネスコンサルティングの仕事に携わっている。

 インドネシアの経済状況は「長期は有望、短期は忍耐」と松井氏は見る。急速な成長で都市化が進んでおり、2025年には都市部の人口比率が65%に達するという。なかでもジャカルタ首都圏への集中傾向が激しい。インドネシア政府統計によると2013年時点の人口は2億4900万人で、うち997万人がジャカルタに住んでいる。短期的には景気後退局面にあるものの、長期的には“人口ボーナス”や中間・富裕層の増加もあって、長期では市場として有望であることは変わりない。

AECへの警戒感から国内産業力強化を推進するインドネシア

 2014年10月に就任したジョコ・ウィドド(通称、ジョコウィ)大統領の経済政策は、問題解決型アプローチをとっており、計画よりも実行を重視しているという。ASEAN経済共同体(AEC)の発足で他国製品が流入してくることを意識して国内産業の競争力を強化しており、対外輸入依存度の低下や、国内産業の高付加価値化などを進めている。一方で、中長期的戦略が見通せていないと松井氏は述べる。

 ICTについては、ジョコウィ政権は公開性確保のための活用が中心という。例えば、予算管理、備品管理、購買管理などをインターネットで一括管理する電子政府(e-Government)を推進している。電子現場視察(e-Buluskan)にも注力する。全国各地と大統領府を結ぶテレビ会議室を導入したり、国民とのコミュニケーションのためにSNSを活用したりしている。これらは、汚職撲滅や住民参加の促進も狙っている。

 外交は、かつてのように日本を特別視していないという。一方で、中国はジョコウィ大統領周辺に対し、強力なロビー活動を展開しており、日本もパイプ作りを再考すべきというのが松井氏の意見である。対外的に強い姿勢を示すことで、人気低下を抑えたいというジョコウィ大統領の政治的意図もあり、外国人を排斥しないものの、インドネシア人が主役という意識が強い。一緒にビジネスをするときは、インドネシア側の手柄とする度量も必要と指摘した。