ICT(情報通信技術)を活用した教育に関するイベント「全日本教育工学研究協議会全国大会」が2015年10月9日、10日の二日間、富山市で開催された。日本教育工学協会(JAET)の主催で、大会のテーマは「広げよう学びの世界」。1200人以上の教育関係者が集まり、講演やワークショップ、研究発表などに参加した。

 初日の午前は、富山市内の小中高等学校など6校で公開授業を実施。午後からは、富山県民会館を会場に、基調講演やシンポジウムなどからなる全体会を開催した。

 基調講演に登壇したのは、大会の実行委員会委員長でもある日本教育工学協会 常任理事で富山大学 人間発達科学部 教育情報システム学 教授/人間発達科学研究実践総合センター長の山西潤一氏(図1)。山西教授はまず、今までのICT利活用教育の歴史を振り返ったうえで、新しい技術と、教員との関係について触れ、「技術が学習環境や教育方法を革新し、同時に教師のもっと効果的な、よく分かる授業をしたい、という改善・改革の意識が新たな技術を作り出す。そしてその技術でまた新しい教育方法が生まれていくサイクルが理想的。そのためには、イノベーションの意識を持って、既存の伝統的なスタイルに対して改革をチャレンジしていく教師のマインドが大切だ」と述べた。

図1●日本教育工学協会 常任理事で富山大学 人間発達科学部 教育情報システム学 教授/人間発達科学研究実践総合センター長の山西潤一氏による基調講演
図1●日本教育工学協会 常任理事で富山大学 人間発達科学部 教育情報システム学 教授/人間発達科学研究実践総合センター長の山西潤一氏による基調講演
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 また、工業社会から知識基盤社会に変化していることを背景に、21世紀を生きるための、知識や技術を児童・生徒が身につけるための取り組みが世界で進んでいることを紹介。「これからは複雑で新しい『解けない問題』をどうやって解決していくかという問題解決能力をどう育てるかが大切だ」と指摘した。

 基調講演に続いては、「学びの世界を広げるICTへの期待」をテーマに、東京学芸大学准教授の高橋純氏の司会でシンポジウムを開催(図2)。午前中の公開授業の模様などを振り返りながら、ICTを活用した教育の在り方について議論した。

図2●「学びの世界を広げるICTへの期待」をテーマにしたシンポジウム。司会は、東京学芸大学准教授の高橋純氏
図2●「学びの世界を広げるICTへの期待」をテーマにしたシンポジウム。司会は、東京学芸大学准教授の高橋純氏
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 全体会では、「2015年度学校情報化先進校」の表彰式も行われた。これは、日本教育工学協会が、総合的に情報化を進めた小中高等学校を認定している「学校情報化認定事業」の一環。「教科指導におけるICT活用」分野で大阪市立本田小学校、高森町立高森中学校、人吉市立人吉東小学校、山江村立山田小学校の4校、「情報教育」分野で京都教育大学附属桃山小学校、「校務の情報化」分野で札幌市立幌西小学校を表彰した。