スマートフォン向けのマルウエア(不正アプリなど悪意のあるソフトウエア)を検出・駆除するセキュリティ対策製品を提供する米ルックアウトは2015年10月6日、日本で企業向け製品「Lookout Mobile Threat Protection 日本語版」の提供を始めたと発表した。英語版は2015年6月に提供し、その後、各国向けに多言語対応を進めてきた。販売代理店としてまず伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と手を組んだ。今後さらに広げていく意向だ。

写真1●米ルックアウトのJim Dolce CEO(最高経営責任者)
写真1●米ルックアウトのJim Dolce CEO(最高経営責任者)
[画像のクリックで拡大表示]

 都内で開催された記者会見では冒頭、米ルックアウトのジム・ドルチェCEO(最高経営責任者)が登壇した(写真1)。「モバイルデバイスは普段の仕事の中で中心的な役割を担うようになってきた中、74%の企業がモバイルセキュリティの問題によって情報漏洩している」とした。その一方で、「モバイルデバイスにマルウエア対策をしている企業は17%に過ぎない」と脅威と対策にギャップがあることを話した。

 米ルックアウトは従来、消費者向けにモバイルマルウエア対策製品を提供してきた。1年前にはKDDIと提携して日本でも本格的に提供を始め、ユーザー数は日本の300万人以上を含む、世界で7500万人以上という。このユーザーベースから収集する1500万個以上のアプリや1日3万個以上の新規アプリのコード情報などを基に、機械学習といったビッグデータの分析技術を使って、マルウエアとして露見する前のアプリでも予測的に不正であることを突き止められるという。

 今回の企業向け製品のマルウエア検知エンジンは消費者向けのものと同じ。消費者向けの製品からリモートワイプといったMDM(モバイル・デバイス・マネジメント)と重複する機能を削る一方で、公式サイト以外からインストールされたアプリがマルウエアかどうかを見極める機能などを加えている。

写真2●ルックアウト・ジャパンの大須賀雅憲執行役社長
写真2●ルックアウト・ジャパンの大須賀雅憲執行役社長
[画像のクリックで拡大表示]

 続いて登壇したルックアウト・ジャパンの大須賀雅憲執行役社長は「シルバーウィーク中にiOS向けのマルウエアが見つかり、Androidに比べてiOSは安全だという“セキュリティ神話”が崩れた」と脅威がOS問わず広がっている現状を紹介(写真2)。「企業はMDM製品を使って企業内のスマホなどを管理しているが、MDMは紛失や不正利用といった内向きのセキュリティは強いものの、サイバー攻撃といった外から来る脅威には弱い」(大須賀社長)。

 CTCは半年前から米ルックアウトへ、企業向け製品の日本語化などを依頼してきた。登壇した松澤政章取締役兼専務執行役員は「数年かけてクラウドビジネスに取り組んでいるが、ここに来て最も力を入れるものの一つがセキュリティだった。ルックアウトによってようやく自信を持って顧客にスマホからのクラウドサービス活用を提供できる」と話した(写真3)。

写真3●伊藤忠テクノソリューションズの松澤政章取締役兼専務執行役員
写真3●伊藤忠テクノソリューションズの松澤政章取締役兼専務執行役員
[画像のクリックで拡大表示]

 松澤氏によれば法人でスマホが使えなかった理由は、「不正アクセスによる情報漏洩、ウイルス感染、端末の紛失による情報漏洩の三つすべてを対策できるソリューションが無かったため」。1番目と3番目は従来のMDMや統合ID管理製品で対策できるが、ウイルス感染についてはiOSとAndroidの両方をカバーする企業向けのモバイルマルウエア対策製品が無かったという。CTCはMDMやID統合管理製品とルックアウト製品を組み合わせてサービスを提供する。

 CTCは今後3年間で200社の導入を目指す。Lookout Mobile Threat Protection 日本語版の価格はオープンだが、1ユーザー当たり月額1000円程度になると見られる。また米ルックアウトは製品のWindows 10対応を来年中に完了させる意向を示し、今後、日本では通信事業者などにも販売代理店を広げるとした。

■変更履歴
Lookout Mobile Threat Protection 日本語版の見込み価格を1台当たり月額1000円程度としていましたが、1ユーザー当たりの誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2015/10/07 13:45]