写真1●覚え書きを交わしたGMSの中島社長(右)とマカティ市長(左)
写真1●覚え書きを交わしたGMSの中島社長(右)とマカティ市長(左)
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写真2●現地で普及している三輪車(トライシクル)を提供する
写真2●現地で普及している三輪車(トライシクル)を提供する
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 自動車向けのIoT(Internet of Things)サービス開発のグローバルモビリティサービス(GMS)は、フィリピンで低所得者層向けに自動車を前払い方式で提供する事業を2015年10月中に始める。利用者は週単位や月単位で料金を負担。自動車購入のローン審査に通らない低所得層でも、携帯電話のような感覚で利用できるようにする。同社が開発したIoT機器とデータ処理のクラウドサービスを活用。課金情報や利用状況を一元管理し、料金支払いが滞ったらネット経由で車両を停止するなど、資産保全も図る。IoTを活用した新たな自動車事業のモデル確立を目指す。

 10月5日付で、フィリピンの首都圏にある中心都市であるマカティ市と、同事業に関する覚書を締結した(写真1)。GMSは同市を拠点に、電動またはガソリン駆動の現地メーカー製三輪車を前払い方式で提供する(写真2)。同社は昨年からフィリピンで実証実験に取り組んでおり、9月からは車両を提供。このほど正式に事業化した。

 GMSは自動車会社から車両を仕入れ、稼働状況を管理するIoT機器を取り付けてリース会社に売却。GMSは売却した車両をリースしてもらう形で、利用者へ提供する。利用者は週単位や月単位で料金を支払う。

 同サービスのポイントは、独自開発したIoT機器とクラウドサービスを使って、提供する車両の稼働状況や利用者の課金情報を一元管理することだ。IoT機器は車両の燃費やスピード、運転経路、ブレーキの状況といった情報を常に集める。エンジンのオンとオフを制御したりアクセルの踏み込みを抑えたりといった機能も備える。利用者ごとの利用金額や入金状況、利用期間などはクラウドで管理する。

 GMSはこれらの仕組みを使い、「これまでは自動車を買ったりローンを組んだりできない低所得者層でも無理なく自動車を利用できるようにする」(中島徳至社長)。タクシー業を営もうと考えている個人や、彼らに車両を貸し出す事業者の利用を想定する。低所得層へ自動車を使った事業を営む機会を提供することで、事業化と社会課題解決の両立を図る。

 IoT機器が持つ車両の制御機能を、料金回収や資産保全にも生かす。利用者からの料金支払いが滞ったら、日本からネット経由で車両を停止。利用者のスマートフォンへ、支払いを通知する。それでも支払わない場合にはIoT機器の位置情報を基に、車両を回収する。「ローンの与信審査を省略しつつ、確実に資産を保全できる」(中島社長)。

 同社は今後、フィリピンの他の都市にも同様のサービスを広げる考えだ。日本の損害保険会社や自動車会社とも組み、「IoTとクラウド、自動車、金融を組み合わせた新しい事業モデルを作る」(中島社長)という。