2015年9月30日から10月2日まで東京ビッグサイトで開催された「ITpro EXPO 2015」。IoT、クラウド、デジタルヘルスなど旬の話題と並び注目を集めたのが、教育とICT分野である。急速な勢いで教育現場に浸透しつつあるデジタル化の波にいかに対応していくべきか――。「教育ICTイノベーション2015」と題したセミナーでは、豊富な実例を交えながら識者が講演した。

Surface Pro 2を学生に貸与しリテラシー向上図る

 基調講演に立ったのは、畿央大学 教育学習基盤部 部長の大山章博氏(写真1)。健康科学部と教育学部を擁し、学生が2000人規模の畿央大学は、2003年に奈良県広陵町に開学した。就職率が高いのが特徴で、過去9年間の平均の就職率は94%にも及ぶ。

写真1●基調講演を務めた畿央大学 教育学習基盤部 部長の大山章博氏
写真1●基調講演を務めた畿央大学 教育学習基盤部 部長の大山章博氏
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 近年、同大学では「情報環境基本計画」と名づけた4年周期のグランドデザインを定め、積極的に学内のIT化を推進してきた。2011年度から2014年度までの第1期では、高速化、大容量化、モバイル対応などをキーワードに情報ネットワークの整備に着手。新たに今年度から2018年度までの期間で、第2期のグランドデザインに取り組み始めた。

 第2期のテーマは学生へのノートパソコンの貸与と学内主要システムのクラウド移行だ。まず貸与に関しては、2013年度に実施した学生アンケートにおける低い専用保有率(44%)を踏まえ、ITリテラシーを高めてほしいとの思いから、2014年度の1回生を皮切りにスタートした。

 機種の選定候補は10機種にも及んだ。採用条件として挙げたのは、Windowsを搭載すること、故障率が低いこと、タブレットのみならずキーボードを備えていること、バッテリーが長持ちして本体が軽いこと。これらの角度から検討した結果、米マイクロソフトの「Surface Pro 2」に決定。学生の使用を考慮して動産保険の加入についても検討したが、最初の1年間を通しての故障率が3.3%と低く、さらにメーカー保証が1年間付属することから、保険に入らずにそのつど故障対応する選択をした。

 浮いた保険費用を活用し、同大学では10%多めにSurface Pro 2の購入に踏み切った。その数はおよそ50台。これらは故障時の交換機となるほか、パソコンルームに共用機として設置し、パソコンを貸与していない3回生、4回生が自由に使えるようにした。

 昨年度から1年間使用した学生にアンケートを取ったところ、とりわけクラウドやOfficeアプリの使い方に関しての知識は高い数値を示し、77%の学生が貸与による前向きな学習効果を認めた。もちろんITリテラシー向上の先には、能動的に学ぶ姿勢の習慣付けがある。大山氏によれば、この点に関しても一定のメドが立ち始めたという。